50分働けば1食無料 家出少女が行き着いた未来の食堂東京・神保町「未来食堂」店主 小林せかいさん

原点となったのは高校3年生の時の家出です。進路などで悩み、大阪の実家を飛び出して東京に出たんです。頼れる人がいないなか、心細い思いで一人で街をさまよいました。1日で取れる原付免許を取得して中卒と称したり、捜索願が出ていることを警戒して夜出歩くのは控えたり、いろいろなことがありました。紆余曲折があって何とか仕事を見つけ、職場の人たちと食事をしたときのことです。「いただきます」と声を合わせて食べ始めたとき、涙があふれて止まらなくなりました。「人とともにいることが自分には必要なんだ」と気づいた瞬間です。すでに2か月がたっていたこの日の晩、家に帰ると電話をしました。

「ただめし券」が目を引く

いつかお店を出したいとは思っていましたが、大学は数学が好きだったという理由で理学部数学科を選びました。大学時代にも個人的に学内で喫茶店を出したり、歌舞伎町のバーで働いたりと、飲食にかかわってきましたが、就職は「何となく面白そう」と思ったエンジニアを選びました。

その後、クックパッドに転職したときのことです。仕事が忙しく、昼食はコンビニで買ったおにぎりなどで済ませる人が多いのを見て、何とかしたいと思いました。会社にあるキッチンで豚汁やカレーなど簡単な食事を作り、ふるまい始めたんです。簡単な献立でしたが、立ち食いする人が出るまで人が集まるようになり、お店を始める決心がつきました。

エンジニアだったことは事業に役立っていますか?

エンジニアがあこがれる技術力の高い会社を辞めるのに、悔いはありませんでした。会社で培った能力は、どんな場所にいても発揮できるからです。実際、未来食堂の様々な仕組みを考えるうえで、エンジニア的思想は大いに役立っています。

例えば「当たり前」よりも「効率性」を重視した発想。飲食業界では人件費や人手不足が課題になっていますが、「ある時はお客様、ある時は従業員」という「まかない」の仕組みは、最初から飲食業界にいたならば思い浮かばなかったかもしれません。このほか、事業計画書や月次決算などすべて公表しているのも、オープンソースが一般的だったITエンジニアの世界にいたからこそです。知識を共有することで業界全体をよくしていきたい、という思いを込めました。

今こそ始める学び特集
学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
注目記事
今こそ始める学び特集
学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録