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まるでイルカかカモノハシ? 常識覆すカニの化石発見

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ナショナルジオグラフィック日本版

カニとは何か? カニをカニたらしめるものはいったい何だろうか? 奇妙なカニの化石の発見によって、その答えが簡単ではないことがはっきりした。さらに、大規模な遺伝子研究とあわせ、カニの進化にいま新たな光が当てられようとしている。

2019年4月24日付けの学術誌「Science Advances」に、現在のコロンビアで発掘された約9000万年前の化石に関する論文が発表された。この場所で発掘された化石の保存状態は素晴らしく、1センチ以下の小さなエビが見つかるほどだ。そんなことは極めて珍しく、熱帯ではこれまでに数カ所しか見つかっていない。

この場所から、ある奇妙なカニの化石が数十個発見された。それは、これまでに見つかっているどのカニとも似ていなかった。球状の大きな目や、オールのような大きな前脚、脚に似た口器など、今日のカニの幼生と成体の特徴を併せもっている。そのため、「不可解で美しいキメラ(複数の動物からなるギリシャ神話に出てくる動物)」という意味のCallichimaera perplexaと名付けられた。

「まるでカニの世界のカモノハシです」と、今回の論文の筆頭著者で、米エール大学およびカナダ、アルバータ大学の博士研究員であるハビエル・ルケ氏は話す。

この発見により、エビやカニ、ヤドカリなどを含む十脚目が、過去も現在も驚くほど多様であることが改めて示された。現生種だけでも1万5000種を超え、その起源は3億5000万年前から3億7000万年前にさかのぼる。

「十脚目では、これまで見たことのない体の構造です。カニの定義の見直しを迫るようなものです」と、十脚目の進化の専門家である米フロリダ国際大学の生物学者ヘザー・ブラッケン=グリソム氏は話す。「ぴったりの名前ですよ」

「まるで空を飛ぶイルカです」

Callichimaera perplexaは十脚目の短尾下目だ。つまり、ヤドカリやタラバガニなどの異尾下目ではなく、ズワイガニやケガニなどと同じく、狭義のカニに含まれる。

今日のカニの成体では、体は一般に幅が広い楕円形で、眼は「眼柄(がんぺい)」と呼ばれる棒状の組織の先に付いている。ワタリガニなど、海底にもぐったり泳いだりするカニには、平べったいオールのような後脚を持つものもいる。さらに、短尾下目のカニの尾は、体の下に折り畳まれている。

ところが、今回発見されたCallichimaeraでは、このどれもが当てはまらない。体はずっと細長く、ピンポン玉のような眼に眼柄は付いていない。これらは、今日のカニでは成体よりむしろ幼生によく見られる特徴だ。さらに、尾は小さいものの、体の下に折り畳まれてはいない。大きなパドルのような脚が2対あるが、体の後部ではなく前部に付いている。また、現生種か絶滅種かを問わず、甲羅の形は他のどのカニにも似ていない。

これまでに判明したことから、このカニは、水中を活発に泳ぐ捕食者だったと考えられる。眼の大きさを考慮すると、夜行性だった可能性もある。

「カニの仲間とは正反対です。普通のカニは、堆積物の中に生息するものです」とルケ氏は話す。「まるで空を飛ぶイルカです」

2兆6800億円の養殖市場

十脚目は太古の昔からとても多様だったため、十脚目の関連性を解き明かすのは極めて難しい。このグループの多様性を明らかにすることはとても重要だと研究者らは言う。十脚目は、水生生物の食物網において生態学的に重要である一方、多くの人々の食と生計を支え、世界の養殖市場の規模は年間240億ドル(約2兆6800億円)にものぼるからだ。

Callichimaeraの発見の他にも、カニの進化に光を当てる大規模な研究が、2019年4月24日付けで学術誌「Proceedings of the Royal Society B」に発表された。ブラッケン=グリソム氏と古生物学者ジョアンナ・ウルフ氏が率いる研究チームが、遺伝子の研究によって、これまでに作成された中で最も詳しい十脚目の進化系統樹を築きあげたのだ。6年を費やし、異なる94種の数百におよぶ遺伝子の配列を決定し、それらを互いに比較して十脚目の祖先の複雑な関係を解き明かした。これまでの研究では、わずかな遺伝子のみで系統樹を作り上げようとしていた。

「驚いたのは、海洋無脊椎動物の最も象徴的なグループの1つである十脚目の関係性に関して、広く支持されている枠組みがないということでした」と論文の筆頭著者である米ハーバード大学の助教であるウルフ氏は話す。

Callichimaeraが発見されたのは、まったくの偶然だった。2005年12月、ルケ氏は、研究チームの大学生数人と、コロンビアの首都ボゴタの北東にある町ペスカの地質図の作成を手伝っていた。ある日、作業に疲れ果て、友人と岩に座って休んでいたルケ氏は、好奇心から岩を砕き始めた。すると、裂け目が1つ開き、奇妙な動物の化石があらわになった。「最高のクリスマスプレゼントのようでした」と同氏は振り返る。

ルケ氏は当初、無脊椎動物の化石を研究しようとは計画していなかった。もともと、恐竜や古代の哺乳類の研究を志して古生物学の道に進んだのだ。しかし6カ月後、近くの別の岩を掘っていた時、同じ生物の化石をまた発見した。化石を見つければ見つけるほど、好奇心が高まっていった。ルケ氏は、化石の写真を世界中の専門家に送り始めた。その中には、論文の共著者に名を連ねる、メキシコ国立自治大学のフランシスコ・ベガ氏や米ケント州立大学のロドニー・フェルドマン氏が含まれていた。

ルケ氏は最初、この化石はアサヒガニの仲間だと考えていた。しかし、化石を詳しく調べるほど、現代の「カニらしさ」を構成するチェックリストに反することがわかっていった。

今回の結果は、泳ぐための脚や大きな爪といった、カニの体のすぐれた構造が、9000万年前までに確立されていたことを示している。またそうした特徴は、時間をかけて増えていったというより、一部のグループがそれぞれ独立して失うように進化したことが示唆される。

カニの大規模な進化は2度

Callichimaeraの発見により、ウルフ氏とブラッケン=グリソム氏の研究は当然進むだろう。現在でさえ、遺伝子データと化石を組み合わせることで、十脚目が形作られた古代からの過程は明らかになりつつある。

十脚目は、独立した系統として枝分かれしてから1億年ほどの間、水生生態系の脇役に過ぎなかった。当時の主役は三葉虫やウミサソリなどだった。しかし、約2億5200万年前、現在のシベリアで大規模な火山の噴火が起き、大量の温室効果ガスが大気中に放出された。その結果、海中の酸素濃度が急激に低下した。

これにより、地球の生物種のおよそ95%が死に絶えた。ペルム紀末の大量絶滅である。しかし、十脚目を含むこの大災害の生き残りは、その直後から大繁栄を遂げることになる。その後の数百万年で、十脚目の系統は急速に多様化した。

カニの2度目の大規模な多様化が起きたのは、ジュラ紀末期である1億4500万年前ごろだ。ウルフ氏の研究チームは、造礁サンゴが出現し始めたためではないかと推測している。初めてサンゴ礁が形成され、さまざまな生物のすみかとなったのかもしれない。

ルケ氏とウルフ氏の研究が発表された今、両氏は協力して、すべての甲殻類を対象としたより大きな系統樹の構築を目指している。これは、サンゴ礁多様性仮説のさらなる試金石となるだろう。

その間に、さらに奇妙な生物の化石が必ず見つかり、系統樹にますます多くの枝が加わることになるだろう、と論文の著者らは述べている。

「21世紀になった今日でも、知見や情報が一切ない(化石)生物がいまだに発見されることに、本当にわくわくします」とルケ氏は語る。「どれだけ多くの宝が、どれだけ多くの遥かなる太古についての貴重な情報が、発見されるのを待って眠っているのでしょうか」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年4月27日付]

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