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うつ病治療、医師との相性も大切 磁気など最新療法も うつ病との付き合い方、遠ざけ方(下)

日経Gooday

2019/5/20

うつ病の発症直後は、薬を飲んでしっかり休むことが何よりも大事だ。写真はイメージ=(c) Katarzyna BiaA asiewicz-123RF
日経Gooday(グッデイ)

うつ病の治療は、薬物療法と対話を中心とした精神療法の双方を組み合わせて行われる。最近、うつ病と双極性障害が区別されるようになってきた。双極性障害(以前は躁うつ病と呼ばれていた)はうつの状態と躁(そう)の状態を繰り返す病気。一方、うつ病は躁状態が見られず、うつの状態のみを示す。近年、うつ病に様々な治療方法が開発されてきた。前回「『うつ』と『うつ病』は違う 大事な受診のタイミング」に引き続き、六番町メンタルクリニック(東京・千代田)の野村総一郎所長に最新のうつ病事情を伺った。

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悲哀の感情が強く、何もかもむなしく感じる。思考がまとまらず、物事を理解できにくくなる場合もある。食欲不振や頭痛、だるさなど様々な体の不調が出現している。こうした症状が2週間以上続くのであれば、精神科や心療内科を受診しよう。

自然に回復する場合もあるが、治療しないでいると大きな苦しみを味わうことになり、前回記事「『うつ』と『うつ病』は違う 大事な受診のタイミング」で紹介したように自殺の危険すら出てくる。

ここで大切なのは、医師と患者の相性が重要だということ。「長くかかることもあるため、医師との相性の善しあしは無視できないところです」と野村所長は指摘する。意外なことだが、精神科の医師は治療のアプローチの仕方で「理系」と「文系」に分けられるそうだ。

「心の病気はつまるところ脳細胞の病理である」と考えるのが理系タイプで、薬物療法を重視する傾向が強い。対して文系タイプは心を心として捉える姿勢が強く、人間関係や心の動きなど心理的な要素を重く見る傾向にある。どちらも正しい考えだが、大事なのは長く付き合えそうかどうかを患者自身が判断することだ。

■薬物療法を中心に精神療法を組み合わせる

うつ病治療の中心になるのは薬物療法だが、心理面での支えとなる精神療法も重要だ。薬物療法では、抗うつ薬を中心にいろいろな薬を使い、状態の改善を図る。うつ病のタイプ別に個々の状態に合わせて使っていくことが主流だ。

精神療法は、患者が抱える問題を医師と患者がともに考え、患者本人が持つ力を引き出していく治療。認知療法や行動療法、対人関係療法など様々な方法がある。

いずれの場合も治療の基本的な目的は、患者の訴えを受け止め、「そうした考えを進めていった場合の結果」に患者自身に気づいてもらうこと。例えば、患者が他人のせいで自分がうつ病になったという思いが強い場合は、そうした考えを抱くようになった経緯やそうした思いにとらわれることの意味を患者自身に考えてもらう。

医師の役割は、あくまでその手伝いということになる。患者によっては、「自分の考えを変えなければならない」という思いの一方、「満足がいく成果が出ない」と悩み、それがさらに焦燥を引き起こすという悪循環(野村所長は「ぐるぐる思考」と命名)に陥っている人もいる。こうした思考パターンを客観視し、悪循環から抜けてもらうことが治療の目的になる。

またうつ病と診断された患者の中には双極性障害という別の病気が紛れ込んでいる可能性もある。うつの状態と正反対の躁の状態を繰り返す病気だ。患者数はうつ病より少ないが、普段では考えられないような高額の買い物をしたり、急に他の人を非難したりして信用や人間関係、財産を失うなど、典型的なうつ病より深刻な影響が出がちだ。うつ病とは異なる病気だが、うつ状態のときに受診するとうつ病と誤って診断される可能性もある。

野村所長は「うつ病と双極性障害の区別は重要ですが、時に区別がしにくいことがあります。患者さんの方でも以前、普通では考えられないほど気分が高揚したり、怒りっぽくなるなど躁状態に陥ったことがあれば、必ず医師に伝えてほしい」と語る。

■うつ病治療では「休む」ことが何より大事

「うつ病にしても、双極性障害にしても、治療法の進歩によって改善率は上がっています。発症後半数の方は6カ月以内に改善します」と野村所長は言う。中には「治療のために長く会社を休めない」という方もいるだろう。しかしうつ病はエネルギーが枯渇した状態なので、休養が大事だ。「休めない」と思い詰めてしまうから、のっぴきならない状態に追い込まれてしまうともいえる。「治療中に本人がやるべき最大の努力は休むこと。しっかり休んで回復するほうが、その後のキャリアへの影響は小さくなります」(野村所長)

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