足のどこを見る? 元気に歩き続けるポイント5つ
いつまでも歩けるための健足術(2)
歩行機能を維持するためには、足のトラブルを早期に見つけることが大切となる。足を健康に保つためには、自分の足をどのようにチェックすればよいのか。「健足術」の連載2回目はその5つのポイントを紹介する。
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元気で歩き続けるためには、しっかり「歩行」することと併せて、「毎日、自分の『足』を自分で見ることが大切です」(下北沢病院理事長の久道勝也さん)。入浴時、あるいは寝る前などに、床やイスに座って、ひざから下を引き寄せて、自分の足を見る習慣をつけよう。ここから足のチェックポイントを紹介する。
(1)まず足裏の状態を見る
足裏の皮膚には、タコ、魚の目ができやすい。
タコや魚の目は皮膚に圧や摩擦が繰り返し起こることで、角質が肥厚した状態だ。タコは角質の肥厚が皮膚の「外部」に膨らんだもの、魚の目は角質の肥厚が「内部」に食い込んだもの。足のタコはただ削っても、また出てきてしまう。
久道さんは、「痛みがなかなかとれない場合は、下北沢病院では『除圧(じょあつ)』を行います。歩行動作の中で足のどの部分にどのように圧がかかっているかを診て、そこに圧がかからないようにするためにオーダーメイドの靴の中敷きを作ります。『除圧』は、足病医の仕事のひとつです」と説明する。
怖いのは、足にタコがあってもまったく痛みを感じない場合だ。糖尿病で、血糖値が高い状態が続いていると、次第に神経は働きを失い、痛みを感じにくくなる。そんな状態でタコが刺激され続けていると、タコに隠れて潰瘍ができてしまうこともある。「そしてその潰瘍からばい菌が入り、血流にのって足に広がり、最悪の場合は足を切断するという事態になる」(久道さん)。たかがタコだと思っても侮れない。
(2)足表面、爪を見よう
足指にもタコ、魚の目がないか見よう。次に水虫が起こりやすい足指の間を確認する。水虫は、白癬(はくせん)菌という真菌(カビ)が原因だ。「実は、水虫は高齢になるほど増えるが、白癬菌が皮膚バリアを破壊してしまうため、ばい菌の侵入口になってしまう。水虫も糖尿病から下肢切断に至るときの大きな原因です」と久道さんは言う。
しかも水虫は皮膚だけでなく、爪にもできる。これを「爪白癬」といい、爪に変形をきたす。爪がどんどん分厚くなり、足が痛くなる。爪に関しては、爪の両端が丸まる巻き爪がないかも確かめよう。足の痛みの原因になる。
(3)足の血流を確かめる
「足の甲に手をあて、足背(そくはい)動脈の拍動を触れる。また内くるぶしの後方にある後脛骨(こうけいこつ)動脈の拍動も確かめよう。そこでトクトクした拍動が感じられれば、血流は保たれている」(久道さん)。
また両足の親指を見てみることも大切だ。ポイントは親指に毛が生えているかどうか。「糖尿病は見えないところで合併症が進行していることがある。神経障害が起きて感覚が鈍くなったり、血流障害によって毛が生えなくなったり、あるいは汗をかきにくくなって皮膚が乾燥することがある」(久道さん)。
(4)足全体の色味を確認
久道さんは、「足の血流が悪くなって、皮膚の色調が変わってきていないかをチェックしてほしい。しもやけは毛細血管の流れが悪くなるために皮膚が赤色、紫色に変色するわけだが、糖尿病の合併症として足の血流が悪くなり、足が紫色がかってくることもある。足の色味を確認する習慣は身につけたい。また足全体を触って、温度も確かめてほしい」と言う。
(5)足全体の形を見る
外反母趾になって、親指が小指の方に向かって強く曲がっていないだろうか。
親指を上に反らせてみよう。痛くてまったく上げることができない場合は、強剛母趾(きょうごうぼし)になっている可能性がある。これは、親指の付け根の関節が腫れて、可動域(動かせる範囲)が小さくなっている状態だ。また、足指が変形していないかも確認しよう。
「高齢者が歩けなくなる一番の原因は、足の変形。現時点で足の形に異変があったら、医師に相談することが大切です」(久道さん)。
もし足に痛みを感じているときは、決して我慢しないこと。それは足が「体によくないことが始まるぞ」という最初のサインを私たちに出している。「その小さなサインを見落とさないためにも、自分の足や靴はきちんと見てほしい」と久道さんは強調する。
下北沢病院(東京都世田谷区)理事長。獨協医科大学卒業後、順天堂大学皮膚科入局。米ジョンズ・ホプキンス大学客員助教授などを経て、米国のポダイアトリー(足病学)に注目し、足専門の総合病院「下北沢病院」を設立。日本皮膚科学会認定専門医、米国皮膚科学会上級会員。
(ライター 赤根千鶴子、日経ヘルス編集部)
[日経ヘルス2019年4月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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