地震・台風・火事… 楽しく防災知識学べる施設10選

NIKKEIプラス1

地震や台風など、私たちの暮らしは災害と隣り合わせだ。
被害を最小限に抑える日々の備えは欠かせない。
体験しながら防災について学べる施設を、専門家が選んだ。

楽しませる工夫 子供に減災意識

被害が40都府県に及ぶとされる南海トラフ地震。被害減少のカギを握るのが日ごろの備えだ。全国に150以上ある防災教育施設は、その強い味方になる。

近年は日ごろの備えでいかに被害を減らすかという「減災」が重視されている。ランキング上位には阪神大震災や首都直下地震など都市型大地震に対する知識や体験が学べる施設が並んだ。とりわけ子供の減災意識を高めることが家庭の防災では重要だ。各施設では「親子でゲームを楽しみながら、自分で身を守るという自助の意識と減災の重要性が自然に身につく工夫をしている」(人と防災未来センターの松村嘉奈子さん)。

5位以降は自治体の消防が運営に関わる施設。消防は地震や風水害、火山の噴火などあらゆる災害の救助、避難支援を担うため、防災教育や体験設備が充実している。体験コーナーは予約が必要な場合もあるので、事前に確認したい。

災害前の準備で被害の程度は大きく変わる。災害への憂いは備えた分だけしか減らない。

1位 人と防災未来センター
(神戸市) 570ポイント
津波の水圧リアルに

阪神大震災の経験と教訓を発信する施設。震度7の揺れの瞬間を映像と音響で体感する「1.17シアター」や、火災に見舞われた街並みを再現したジオラマが、激震のすさまじさを伝える。「震災の現場にいるかのようなリアルさを体感でき、いやが応でも防災意識が高まる」(王麗華さん)

南海トラフによる津波を想定し、水圧がかかる中で避難体験をするコーナーや、風水害の脅威を解説する映像など防災に関する情報は多彩。世界各地で起きている災害についても展示しており「防災を学術的に知りたい専門家から楽しく学びたい子供まで、多様な目的に対応できる」(国崎信江さん)。「様々な災害の調査研究を行うなど、目指す防災のレベルが高い」(島崎敢さん)

年間の来場者は約50万人。アジアや欧米からの観光客も増えている。誘客・運営業務担当の松村嘉奈子さんは「授業で来た小学生が両親を連れて再訪することもある」と話す。災害に備え「何をすればいいのかを家族で学べる」(甘中繁雄さん)。

(1)阪神電鉄岩屋駅、春日野道駅から徒歩10分(2)大人600円、小中高生は無料(3)http://www.dri.ne.jp/

2位 野島断層保存・北淡震災記念公園
(兵庫県淡路市) 480ポイント
本物の断層140メートル 間近で

阪神大震災を引き起こした野島断層を約140メートルにわたって屋内保存している。断層の断面が見られる展示もあり、地形の変化を詳しく観察できる。「どんな写真や映像より、実物を見ることで地震をリアルに想像できる」(甘中さん)、「硬い地盤が一瞬で割れる地震の脅威を、デジタル慣れしている子供たちにこそ皮膚で感じてほしい」(あんどうりすさん)

断層の真横でも壊れなかった「地震に強い家」が保存され、家も含めて国の天然記念物になっている。阪神大震災のときの神戸市の揺れと、東日本大震災のときの宮城県栗原市での実際の揺れを再現して比較するコーナーがあり、他の施設にはない生々しい地震体験ができる。

レストランや物産館も充実しており「防災に興味がない人を呼び込む仕掛けがいい」(島崎さん)。震災の記憶を伝える語り部の話も聞ける。語り部を務める池本啓二営業部長によると「防災教育施設を検討しているアジアの行政関係者の見学が増えている」という。

(1)淡路島内のバス「震災記念公園前」から徒歩5分(2)大人700円、中高生300円、小学生250円(3)http://www.nojima-danso.co.jp/

3位 そなエリア東京
(東京都江東区) 470ポイント
生きる知恵 ARで楽しく

首都直下地震に備えて国土交通省と東京都が整備した東京臨海広域防災公園にある。地震発生時には園内にあるオペレーションルームが国の緊急災害対策本部になる。映画「シン・ゴジラ」でも使われた。「圧巻のスケール。外国人の来館者も多く、日本の防災教育施設への関心の高さがうかがえる」(王さん)

地震発生から支援体制が整うまで自力で生き抜く目安は72時間。この72時間の生存力を身につける体験学習ゾーンでは、音や映像で余震を演出したジオラマの中を歩き、タブレット端末を使ってクイズを解きながら防災知識を身につける。「AR(拡張現実)で子供から大人まで楽しめる」(山村武彦さん)。避難所を再現したコーナーもあり、「興味を持続しながら自分のペースで知識を吸収できる」(防災教普及協会)。

レストランでは「災害食のランチを食べられる。おいしさを実感してほしい」(別府茂さん)。丸山浩司センター長は「災害後の自助の防災力を高めるヒントを見つけてほしい」と話す。

(1)新交通ゆりかもめ有明駅からすぐ(2)無料(3)http://www.tokyorinkai-koen.jp/sonaarea/

4位 KIBOTCHA
(宮城県東松島市) 450ポイント
停電時の避難 目隠しで

「キボッチャ」は希望、防災、未来(フューチャー)を合わせた造語。東日本大震災の津波被害を受けた小学校を18年に改装し、宿泊できる防災施設に再生させた。「実践的な体験ができ、被災後の生き抜く力を学べる」(王さん)。停電時を想定して目隠しで行う避難体験や、ロープ1本でけが人を背負う方法など「費用以上の体験効果が得られる」(甘中さん)。

宿泊すれば漁業や農業体験ができ「エンターテインメント要素を加えた視点が興味深い」(別府さん)。同施設の井出方明統括本部長は「体験したことは身につく。楽しいことは忘れない」と話す。

(1)JR仙石線野蒜(のびる)駅から徒歩5分(2)大人300円、小中学生200円、宿泊は5400円から(3)http://kibotcha.com/

5位 京都市市民防災センター
(京都市) 440ポイント
押し寄せる水 4Dで体感

地震の揺れ体験や煙の中での避難、強風体験など幅広いプログラムがある。本物の消防ヘリで京都上空を飛ぶ疑似飛行や、椅子が振動する4Dシアターによる地下街の水害体験も。「ホテルを模した総合訓練コーナーは事業者にぜひ体験してほしい」(坂口隆夫さん)。「女性視点での防災展示も注目」(あんどうりすさん)

施設を運営する京都市防災協会の南部雄二・事業課長は、4月に起きたパリのノートルダム大聖堂の火災を受けて「文化財保護は共通の課題で、改めて自分たちで町を守るという防災意識を強めたい」と話す。

(1)近鉄十条駅から徒歩8分(2)無料(3)http://kyotobousai-c.com/

6位 東京消防庁・本所防災館
(東京都墨田区) 430ポイント
風・豪雨 仕掛けふんだん

地震体験のほか、風と豪雨による台風体験、ドアの開閉が水圧で困難になる都市型水害体験ができる。国内最大級の煙体験コーナーも。「防災シアターでは音響システムや振動などインパクトのある演出が印象的」(坂口さん)。「映像や各種体験コーナーのレベルが高く、日本随一の防災教育施設」(玉木貴さん)

海抜ゼロメートル地帯にあり「地域ごとの洪水の被害想定がわかる映像体験は都民であれば必見」(あんどうりすさん)。様々な視点から防災に関心が持てるような仕掛けがある。

(1)東京メトロ半蔵門線錦糸町駅から徒歩10分(2)無料(3)http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-hjbskan/

7位 東京消防庁・池袋防災館
(東京都豊島区) 330ポイント
夜の被災想定 消火訓練も

災害は昼間に起きるとは限らない。池袋防災館では金曜の夜に、夜間の被災を想定した「ナイトツアーなど珍しい企画が充実している」(防災教育普及協会)。夜間の消火訓練や、煙が充満する暗闇を避難する経験ができる。「高層ビルでの長周期地震動など5種類の揺れを再現するコーナーや、災害時の救出・救護体験にも力を入れている」(玉木さん)

学校や企業で使える防災マップを作る図上訓練コーナーもある。「繁華街やオフィス街の近くにあり、会社員も気軽に利用できる」(坂口さん)。

(1)池袋駅から徒歩5分(2)無料(3)http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-ikbskan/

8位 横浜市民防災センター
(横浜市) 310ポイント
屋内で揺れ 危険を確認

横浜市を襲った過去の地震や今後予想される大地震について、ストーリー仕立ての映像で再現。「迫力あるシミュレーションがあり、大都市で直下型地震が来たらどうなるかを学べる」(国崎さん)。部屋に入って地震や火災を疑似体験し、どう対応するかを身をもって学べる減災トレーニングコーナーも人気だ。

インストラクター付きのツアーが基本。事前に予約できるが、空きがあれば当日でも参加できる。親子で休憩できるスペースもあり「防災カフェなどコミュニティーに力を入れている点も評価できる」(島崎さん)。

(1)横浜駅から徒歩10分(2)無料(3)http://bo-sai.city.yokohama.lg.jp/

8位 大阪市立阿倍野防災センター
(大阪市) 310ポイント
荒れた街再現 余震の怖さ知る

4月27日に全館を再整備した。入り口には「おおさか防災情報ステーション」を新設し、地域特性に応じた災害リスクを学べる。災害を巨大スクリーンで見る「タスカルシアター」や「南海トラフ地震の予想津波高を実寸大で体感できる」(山村さん)施設もある。

地震や消火、煙体験のほか、被災した街を再現して余震の危険を学ぶコーナーも。「エンターテインメントと教育のバランスに優れた西日本有数の施設」(玉木さん)。「行くたびに発見があり、被災時の課題を解決してくれる施設」(国崎さん)

(1)地下鉄阿倍野駅から徒歩5分(2)無料(3)http://www.abeno-bosai-c.city.osaka.jp/tasukaru/

10位 札幌市民防災センター
(札幌市) 210ポイント
2階で煙 逃げ方指南

3D映像と立体音響で、土砂や水害など札幌を想定した災害を疑似体験できる。高層の建物で起きる長周期地震動など8種類の地震を体験するコーナーや、消火体験もある。

「全国的にも珍しい、2階建ての煙避難体験など新しい火災対応が魅力」(玉木さん)。煙が充満し、停電で暗くなった建物の中で、煙を吸い込まないよう体を低くする避難姿勢が実践できる。暴風体験は「風速30メートルの風に映像を組み合わせ、災害現場にいるような臨場感がある。台風シーズンの前に行くと対処法が学べる」(山村さん)。

模型のヘリコプターを操縦して疑似飛行体験ができるほか、館内に実物の30メートルはしご車を展示。「運転席での写真撮影や無線交信など子供が喜ぶ工夫がある」(坂口さん)。

(1)地下鉄東西線南郷7丁目駅から徒歩3分(2)無料(3)https://www.city.sapporo.jp/shobo/tenji/

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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。施設名(所在地)。(1)交通手段(2)入館料(3)情報サイト。写真は1、2位大岡敦、3位三浦秀行撮影。4~10位は各施設提供。

調査の方法 全国の体験型防災教育施設の中から、専門家の協力で主な30施設をリスト化。防災教育の充実度や楽しめる工夫、交通アクセスなどの観点で10人の選者がそれぞれ1~10位を選び、編集部で集計した。(大久保潤が担当しました)

今週の専門家 ▽あんどうりす(防災ガイド)▽王麗華(いこーよ)▽甘中繁雄(日本防災士会事務局長)▽国崎信江(危機管理教育研究所代表)▽坂口隆夫(市民防災研究所理事・事務局長)▽島崎敢(名古屋大学未来社会創造機構特任准教授、防災科学技術研究所客員研究員)▽玉木貴(市民防災ラボ代表)▽別府茂(日本災害食学会副会長)▽防災教育普及協会▽山村武彦(防災システム研究所所長)=敬称略、五十音順

[NIKKEIプラス1 2019年5月4日付]

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