「普通じゃない」を突き抜けるには?
著述家、湯山玲子さん
昔から「普通じゃない」を褒め言葉だと思い、過ごしてきました。発言や行動、考え方などをわざと湾曲させるがゆえに、たくさんいじめられたり嫌な思いをしたりしています。みんなと違う存在になるため、無理をしてきた自分。心から「自分はこうだ」と突き抜けるにはどうしたらいいのでしょうか。(大阪府・20代・女性)
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みんな一緒がベスト、というのは日本人ならば誰もが身にしみている処世術です。それが才能を潰し、生きにくくしているという弊害が取りざたされ、個性を尊重する風潮が、メディアなどで喧伝(けんでん)されてきました。いわゆる「普通じゃないほうがイケてる」というモードですね。
相談者氏の年齢を鑑みるに、ご両親や学校の先生たちも、そういったメッセージを発信してきたのに違いないし、相談者氏はその点においての「優等生」だったのではないでしょうか。
しかし、この「普通じゃない=個性」という考え方が、そもそも間違っているのです。そもそも個性とは、一人ひとりが自分の感情や意思、言葉を素直に外部に向かって表したところに自然と現れるものであり、「普通」を意識してその逆ぶりをするという言動ではない。(と、まあそのあたりは、みんな一緒の同調圧力が当たり前の日本の文化風土の中で、いかに個性が間違って理解されているか、がよくわかる話なのですが)
相談者氏は今までいじめられてきた、といいますが、単純に「みんなと一緒じゃない」ということを周囲が咎(とが)めただけではありません。相談者氏の行動の根底にある、個性的だと褒められたい、という動機が周囲に見透かされちゃったからなのだと思うのですよ。「褒めて、褒めて」というメッセージに素直に反応する人はほとんどいないし、残念ながらそれは多くの場合、嫌悪の対象になってしまう。
では、どうしたらいいか? まず「みんなと違う存在になる」という想いをやめましょう。頭の中から「みんな」や「普通」を追い出して、自分自身が他人やモノやコトに出会ったときに、どんな感じ方をしたのか、ということを正直にかつ大切に積み重ねていく。たとえば、みんなが可愛(かわい)いといっているパンダはやっぱり自分も可愛いと思った(思わなかった)、ということを大事に心に留めておく。
結果、自分なりの感情の引き出しが豊かになっていき、それが言葉や行動になって外に出ていったとき、初めて人はその人を、自分の世界がある人、つまり、個性的であり普通じゃない人=周囲を圧倒する存在として認めるのですから。
[NIKKEIプラス1 2019年5月4日付]
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