写真も動画も初! 世界最大のハチの生きて動く姿
きわめて珍しい世界最大のハチ「ウォレス・ジャイアント・ビー(学名:Megachile pluto)」が2019年1月、インドネシアで見つかった。野生下で生きている個体が、動画や写真で記録されたのは初めてだ。
このハチの撮影に成功したのは自然写真家クレイ・ボルト氏らのチーム。見つけたのはメスで、その羽音は「深い、ゆっくりしたうなりで、聞こえると同時に体で感じることもできる音でした」とボルト氏は言う。チームメンバーで米プリンストン大学の生物学者イーライ・ワイマン氏は、「何年も自分の想像の中にしかいなかった生物を実際に見ることができた、信じられない体験でした」と振り返っている。
ウォレス・ジャイアント・ビーは大きいもので体長約4センチ、翅を広げると幅6.4センチに達し、クワガタムシのような大きなあごを持つ。このあごで木から樹脂をこすり取り、メスが子育てするための巣穴をシロアリの巣の中に作る。食べるのは他のハチ同様、花蜜や花粉だ。
このハチは、1859年、ダーウィンと同じ時代に活躍した博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスによって初めて記録された。
その後、長い間、見つからず、ウォレス・ジャイアント・ビーは絶滅したと考えられていた。しかし、1981年になってアダム・メッサーという昆虫学者がインドネシアの北マルク諸島の3つの島で、このハチを見つける。標本を採集し、1984年に報告した。そのなかでメッサーは、このハチは生息地でもまれな存在であり、単独で生活し、樹上性のシロアリ塚の中にしかいないため、なかなか見つけられないと記している。
1991年にもフランスの研究者ロッシュ・デスミエ・デ・シュノン氏が採集したが、このとき写真や映像は撮られていなかった。
ロッシュ・デスミエ・デ・シュノン氏は現在80歳。インドネシアのアブラヤシ研究所で働いていた1991年、ウォレス・ジャイアント・ビーを探しにハルマヘラ島へ出かけた。地元住民の中に詳しい人がいて、このハチが樹液を集めにくる木に案内してくれた。採取したのは1匹だけだが、調査中にウォレス・ジャイアント・ビーを約20~30匹見たという。
「見つけたときは本当にうれしかったです。大発見だとわかっていましたから」。デ・シュノン氏はこう話す。だが、彼はこのことを論文にしなかった。その理由のひとつは、昆虫のコレクターに、生息に関する情報を悪用されることへの懸念があったからだ。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2019年2月26日付記事を再構成]
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