『きのう何食べた?』で加速 男性同士の恋愛ドラマ
男性同士の同性愛を題材にした物語のジャンル「ボーイズラブ(BL)」が、2018年放送のドラマ『おっさんずラブ』の大ブームによって、急激に世の中に浸透。BLを描いたマンガの実写化も次々と決定しており、4月には『大奥』で知られるマンガ家・よしながふみの『きのう何食べた?』が、西島秀俊と内野聖陽のW主演でドラマ化。20年は大倉忠義と成田凌で『窮鼠はチーズの夢を見る』(作・水城せとな)が映画化される。
マンガや小説の世界では90年代に既に定番化しており、女性を中心に熱い支持層を持っていた。累計100万部を超えるようなヒットシリーズも多数存在し、なかにはテレビアニメ化されたものも。15年には『抱かれたい男1位に脅されています。』(作・桜日梯子)のドラマCDがオリコンのアルバムデイリーチャート1位を獲得するなど、市場を生んでいた。
男性の同性愛を取り上げた創作物は、ドラマや映画において過去になかったわけではない。ところが、男女の恋愛を描くなかでの1つのスパイスとして物語に組み込まれることがほとんどで、かつドロドロとした重い愛憎劇の部分を担っていた。しかし、『おっさんずラブ』は同性愛を真正面から描きながらもラブコメとして秀逸なドラマを提供することで、多くのファンを獲得。1つのジャンルとして認知させることに成功した。
ドラマの設定が変化球に
テレビ東京「ドラマ24」枠で新たに始まったのが、同棲中の男性カップルの食生活を描いた『きのう何食べた?』だ。制作局ドラマ制作部主任の松本拓氏は、「ボーイズラブをやろうと思ったわけではない」と言う。「『孤独のグルメ』などテレ東でずっとやっている食べものドラマの延長で、このドラマのもう1つのテーマであるセクシャルマイノリティーの世界観を考えていただければと思います」。
また、松本氏はキャラクターや物語の設定に言及する。
「今はカッコいい人がカッコいいことをしてもウケない気がしますし、主人公が身近でリアリティーがないと魅力的に感じてもらえないと思います。『きのう何食べた?』は身近な2人がいい人でご飯を食べる、というのが入口。そして、月の食費の上限が2万5000円で、そのなかでご飯を作って生活している、という設定。脚本の安達奈緒子さん(『コード・ブルー ‐ドクターヘリ緊急救命‐3rd season』)には、よしなが先生の素敵な世界観の原作を全12話にまたがるドラマにうまく構成していただきました」
BL作品が人気を得ていることについては、「昔のドラマは野島伸司作品などもっと過激。1周して今は設定が変化球に。ただ内容が伴わないと出オチになってしまう」と松本氏。優れた良質な物語があるからこそ、ボーイズラブは今マンガ、小説、ドラマ、映画と多くの場所で支持を得ているのだ。
(ライター 山内涼子)
[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]
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