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新商品は「自分向け」 ギフト菓子ヨックモックの挑戦

日経クロストレンド

2019/5/14

ヨックモックが立ち上げた菓子の新ブランド「わたしときどきCookie」
日経クロストレンド

ヨックモック(東京・千代田)が菓子の新ブランド「わたしときどきCookie」を2019年3月に立ち上げた。おいしさと共に栄養価の高さを売りにするクッキー2種。デパート中心に展開してきた既存ブランドとは違い、スーパーで販売する。創業50年を迎えるギフト菓子の老舗が新領域開拓に挑む。

わたしときどきCookieシリーズの第1弾として発売したのは、「グラノーラ」と「いちじく」の2種類。いずれも食物繊維が多い全粒粉、ミネラルを含む粗糖やてんさい糖、ココナツオイルなどを配合し、栄養価の高さや素材の信頼性を前面に押し出した。ヨックモックホールディングス マーケティング部 マーケティンググループ グループ長の小野洋子氏は、「素材選びで意識したのは、一目見て『食べられるもの』だけでできていると分かること。食品添加物はもちろん、カタカナの長い名前が付いた食材など、ぱっと見て何か分かりにくいものは避けた」と話す。

かみ応えも重視している。これは少量でも満足感を得られるようにするため。「上質感や口溶けなどを特徴とするヨックモックのクッキーとはある意味、対照的」(小野氏)な発想だ。

「わたしときどきCookie」シリーズの第1弾「グラノーラ」。クッキー生地の表面にグラノーラをトッピング。1袋(6枚入り)で税別300円
「わたしときどきCookie」シリーズの第1弾「いちじく」。ほろほろとした食感のクッキーにイチジクのジャムが包まれている。1袋(4個入り)で税別300円

■菓子の食べられ方が2000年代前半に変化

新ブランド開発の背景にあるのは、菓子の食べられ方の変化だ。小野氏によると、核家族化の進行や女性の社会進出に伴い、菓子は家庭で家族が分け合って食べるものではなくなってきたという。

オフィスでの菓子のあり方も変化した。江崎グリコが02年に開始したオフィス向け置き菓子サービス「オフィスグリコ」や、05年に発売したビジネスパーソン向けの菓子「メンタルバランスチョコレートGABA」に象徴されるように、仕事中のリラックスや間食として菓子を食べる習慣が一般化したのだ。その結果、菓子の個食化、日常化が進んだと小野氏は解説する。

一方で「ヨックモックはギフト用の製品というイメージからなかなか抜けられていない」と小野氏は指摘する。それはヨックモックが重視してきた上質感やデパートを中心とした販路にも由来する。

「ヨックモックが定番ギフトとして信頼されていることはとても重要。ただ、それだけでは顧客との接点が『点』になりがち。もっと顧客との接点を増やし、長いお付き合いをするためにも、日常的に食べられるお菓子を作りたい。そのためには手軽に手にとってもらえる商品と新たな流通網の開拓が必要だった」(小野氏)。

ギフトとしてのヨックモックの信頼感と菓子としての日常性を、単一ブランドで両立することは難しい。そう考えた小野氏と同部署主任の上山由利子氏は、新ブランドの立ち上げに動き出した。目を付けたのは、健康志向が強い女性たち。「近年は糖質の低さや栄養価の高さを売りにする『ウェルネス菓子』が多いが、自社で行った調査では、5割近い女性がそれらに『おいしくない』などの不満を感じていた」(上山氏)。

開発過程で重視したのがターゲット層を対象としたコミュニティー調査だ。30代を中心に90人程度の女性を集め、クローズドの掲示板を作成。2~3カ月にわたって、菓子を食べる習慣やパッケージデザインに関する意見などを集めた。この調査を2期に分けて実施。試食会なども開いたという。

第1弾のラインアップにイチジクのクッキーを選んだのも、コミュニティー調査で、健康志向が高い女性にイチジクが人気という確信を得たからだ。実際、イチジクは、豊富な食物繊維や様々なミネラルを含む食品。加えて、脂肪として体内に定着しにくいココナツオイルでバターを置き換えるなど従来とは違う材料も取り入れた。

「それでもヨックモックの基本は守っている」と小野氏。創業時から、ヨックモックのクッキーのポリシーは、材料をシンプルにすることだ。「シガール」などの定番製品も、基本の材料はバター、卵、砂糖、小麦粉の4つ。それにチョコレートを加えたり配合を変えたりして、バリエーションを広げているという。「シンプルな材料というヨックモックの強みは生かしつつ、今のニーズに合わせた菓子を作った」と胸を張る。

当面の販売は自社の直販サイトと成城石井の一部店舗だが、「いずれは5つくらいのチェーンに展開したい」と意気込みを見せる。デパート内の自社店舗での販売が中心だった同社にとって、商品をスーパーなどの流通網に乗せるのは初めてだが、「パッケージ裏の原材料をチェックして食品を選ぶような消費者なら良さが分かってくれるはず」。ギフトとして定番のポジションを築いた同社が、設立50年の節目に新たな市場を切り開けるか。挑戦は始まったばかりだ。

ヨックモックホールディングス マーケティング部 マーケティンググループ グループ長の小野洋子氏(右)と主任の上山由利子氏

(日経クロストレンド 平野亜矢)

[日経クロストレンド 2019年4月5日の記事を再構成]

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