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米東海岸でクジラの「異常死」が急増 船舶と衝突

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/15

ナショナルジオグラフィック日本版

研究者によれば、2016年1月以来、米国東海岸沿いで死んだザトウクジラは88頭を数える。その前の3年間に記録された数の2倍以上だ(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

米海洋大気局(NOAA)は2017年4月、米国メーン州からフロリダ州にかけて、ザトウクジラの「異常死事例」が起こっているとの宣言を発表した。2年近く経った今も、宣言は撤回されていない。2016年1月から2019年2月半ばまでに、NOAAが記録したザトウクジラの座礁は88頭。この数字は、2013年から2016年までに座礁したクジラの2倍以上に上る。

ザトウクジラの異常死事例が宣言されたのは2003年以来4回目のことだ。この宣言を出さないと、NOAAは座礁したクジラの調査を追加で行えない。だが、2017年4月の宣言直後に開かれた電話会議では、回答しきれないほどの数の質問が出た。航路にいるクジラが増えているのか、それとも船が増えているのか? 海水温の変化でクジラの獲物が海岸近くに引き寄せられ、そのためクジラも沿岸に集まっているのか? 海の中に広がる雑音(ノイズ)がクジラの方向感覚を狂わせているのか?

■初めてではない「異常死」

このとき、NOAAの担当者たちは、早い段階で答えを出すのは「とても難しい」と話していた。過去に3回発生した異常死についても、原因は結局「不明」とされたままだ。

しかし、2016年1月にバージニアビーチ沖で死んだザトウクジラが見つかってから3年経った今、バージニア水族館の科学者たちは、クジラの死因を突き止めたと考えている。「異常死の2つの主な原因は、船との衝突と漁具だというのが結論です」。同館で座礁クジラについての対応を取りまとめているアレクサンダー・コスティディス氏は話す。

だが、それが起こる理由は「少々ややこしい」と、ある研究者は言う。なぜクジラが船に近づいて来るのか、あるいはクジラは船を察知して、多少なりとも避けようとしているのか、科学者たちはまだ解明できていない。

コスティディス氏らのチームは、バージニア州内で死んだクジラは全頭調べ、可能な場合は解剖もしている。ノースカロライナ州での座礁クジラにも必要なら対応している。

座礁クジラの知らせを受けたときの対応は、通常どのようなものかと尋ねると、同水族館の研究コーディネーターであるスーザン・バルコ氏はこう言った。「まず、パニックになります」。クジラが死んでいれば、もう海岸に打ち上げられているのか、あるいはどこの海岸に引き上げれば解剖できるかを、チームが判断する。解剖を行うのは、海沿いの自治体で働く選ばれた職員たちだ。もちろん、彼らにとっても楽しめる仕事ではない。観光客がいる夏の数カ月は特にそうだ。鋭利なナイフを使い、クジラの大きな内臓を取り出す。死骸を運んだり、後で砂浜に埋めたりするのに、建設重機も必要になる。

研究チームは、クジラの死因を判断しようと、スクリューの衝突、擦り傷、骨折など鈍器による外傷の跡を探す。何かとぶつかったのは死後である場合も多い。また、傷が治癒した跡が見つかることもあり、船と衝突したり漁具がからまったりしたあと、回復したことがわかるとバルコ氏は言う。可能なら、クジラの全体的な健康状態を評価し、病原体の有無や、胃の内容物も調べる。潜在的な病気の兆候にも目を光らせている。

「推論できることはありますが、正確とまでは言えません。さらに死体が腐敗しているとなると、単なる憶測になってしまいます」とバルコ氏。

■防ぐのは困難

船との衝突を防ぐには、クジラの生態をさらに解明しなくてはならないし、船舶航行に関わる人々にクジラへの意識を高めてもらうことも必要になる。NOAAは、絶滅危惧種であるタイセイヨウセミクジラなど特定の鯨類を守るため、船舶の速度規制を設けており、これはほかのクジラを守るのにも役立っているとみられる。NOAAの規制では、「季節管理エリア」と呼ばれる特定の区域では、全長約20メートル以上の船舶は速度10ノット以下で航行しなければならない。

「予防するのは、かなり難しいですね。まず、クジラのほうも船を察知しなければなりません。次にクジラが船を脅威と認識して、そこから離れるなどの適切な行動をとる必要があります」とバルコ氏は言う。

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