居心地の悪さには鈍感に 多様な経験が世界へつながる
一橋大学名誉教授 石倉洋子(3)
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世界で通用する人材、会社で求められる人になるにはどうしたらいいの? そんな素朴な疑問に、世界経済フォーラムなどの国際舞台で多くのリーダーと接してきた石倉洋子氏は「ちょっとしたことから始めて、毎日の習慣にしてしまえば、生活の一部となって、どんどん力がついていく」と言います。では、どんな習慣を身につければいいのでしょう? このほど文庫として刊行された「世界で活躍する人の小さな習慣」から連載で紹介します。
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最近、業界リーダー企業のトップにお目にかかる機会があったのですが、自分の会社の属する業界以外のことには関心がないようで驚きました。国内を中心とする企業でそれなりの地位に就いたとしても、若いうちから日々の仕事の忙しさにかまけて、ほかの分野のことを知る、新しいことを試す、新しい経験を積む機会を失してしまうと、「自分の世界しか知らないつまらない人」「その会社、業界でしか通用しない人」になってしまいます。
そもそも業界の境界がはっきりしなくなり、競合はまったく違う業界から登場することも多い中、これまで知っている自分の業界しか興味がないのでは、この企業の将来はあるのだろうか、と先が思いやられる気持ちになりました。
それでも会社の名刺があるうちはよいかもしれませんが、「あなたは誰で、何をしようとしているのか」を明確に説明できないと、世界ではまったく通用しません。それに、おもしろい話ができないとなると、ディナーやレセプションでもあまり相手にしてもらえなくなってしまいます。
知識もスキルも人脈づくりも実践でしか身につかない
皆さんの中にも、「仕事を始めてから自分の世界が狭くなった」「人が少ないのに仕事量が増えて、なかなか社外のセミナーやイベントに行ったり、新しい分野の人に会ったりする機会がない」。そう思ったことがある人もいるのではありませんか。
確かにITの恩恵(?)で、仕事量が増えていることは間違いないようです。これまでなら相手から返事が戻ってくるまで"遊んで"いられたのに、今やメールやSNSですぐ返事や反応があるため、すばやく対応するとかえって仕事が増えてしまう、と感じている方もいるでしょう。
しかし、それを言い訳に外との接触を怠ってはいけません。ここでは、いろいろな経験を積んだり、活躍の「場」を広げたりすることについて考えてみます。
たとえばリーダーシップもイノベーションも、それを発揮したり実現したりする力は実践からしか身につかないので、実践の場が得られないと、それらとはまったく無縁の"残念な人材"で終わってしまいます。もちろん、キャリアもライフスタイルも狭まってしまいます。