みうらじゅん 実は断捨離から始まったコレクション

「すべてのモノは、何らかでつながっていると思うんですよ。膨大に集めたモノとモノがつながって、『ないカテゴリー』や『ない概念』が出てくることがある。あるとき、それに気づきました。

そこに『黒木憲デラックス』っていうレコードが置いてあるでしょ?  それは黒木憲の歌を聴こうと思って買ったものじゃないんですよ。重要なのは彼が座っている椅子なんです。

映画『エマニエル夫人』のポスターで、エマニエル夫人は籐(トウ)の椅子に座っていたじゃないですか。あるとき、そのサントラ盤から派生したであろう『籐の家具のジャケット』が世界中にあることに気づいたんです。そこから、『籐の家具のジャケット』を集め始めた。『エマニエル夫人』のサントラを買ってから黒木憲にたどりつくまで50年近くかかってるんですけどね(笑)。見つけた時にはガッツポーズ取りました(笑)。

100年経ったら『エマニエル夫人における籐家具文化』という研究書を出す人もいるかもしれない。第2の柳田国男みたいな人がね(笑)。そういうときのために、買ったものは捨てずに、キープオンし続けるんです」

写真奥にあるのが、『エマニエル夫人』サントラ盤から50年近くかかってたどりついたという『黒木憲デラックス』

さまざまなモノを「キープオン」し続けるみうらさんに、昨今の「断捨離」「生前整理」ブームはどう映るのか。

「本気で集めたいものがある人はそもそも捨てようなんて考えもしないはずですよ。大切なものが生前になくなったら、それだけで悩みが増えるんですもん。

今回、出版した本を『マイ遺品コレクション』というタイトルにした理由の一つは、『とっておくのもの』という提案がしたかったんですよ。『とっておきのもの』じゃなくても、とっておいてもいいんじゃない?的な。俺に『そんなにモノを残したら遺族の人も困るんじゃないですか?』って言う人もいるけど、そんなの大きなお世話ですから(笑)。

それに生前整理をしなきゃいけないようなモノ持ちって、そんなにいないですよ。よくテレビで『親族がモメて……』なんて話を見るけど、あれは金持ちの話。普通の人にはそんな遺産あるはずないじゃないですか(笑)。遺産相続の専門家に聞いてみてくださいよ。『モメることはないでしょう。大丈夫ですよ』って笑われるはずですよ」

今、欲しいモノは?「車の免許を持ってないんで、写真入りの証明証がないんです。だから映画をシルバー料金で見る時もドキドキですよ。一応、保険証は持っていくんだけど。『じじいですか?』って聞かれた時に『じじいですよ』って証明できるモノがほしいんです」

収集にはウケが必要

みうらさんの話を聞いていると、モノを集めて維持する大変さと同時に、楽しさも伝わってくる。みうらさんによると「コレクションを続けるにはそこが大切」だという。

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