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人がいるところにネズミあり 彼らと縁は切れるのか?

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/7

ナショナルジオグラフィック日本版

2050年には、全世界の人口の約7割が都市部に住むとの予測があり、人口はますます都市へと集中しそうだ。人間が集まる場所にはネズミも集まる。都市でゴミをあさって生きる彼らは、人間活動を映し出す鏡とも言える存在だ。ナショナル ジオグラフィック2019年4月号では、そんなネズミたちと人間のこれからの関係に迫っている。

◇  ◇  ◇

ネズミは、人間の影のような存在だ。人間は都会の地上で暮らし、ネズミはたいてい地下にいる。

人は昼に働くが、ネズミは夜に活動する。ドブネズミは下水管を巧みにはい上って便器の中から鼻を突き出し、クマネズミは樹上に巣を作って電線の上を歩き回る。

世界各地の都市部ではネズミが増え続けている。過去10年間で15~20%も増えたという推計もある。人間のすぐそばで暮らす生き物のなかでも、ネズミは最も嫌われていると言っていいだろう。不潔でずる賢く、荒廃した都会の象徴であり、病原体の運び屋というイメージもつきまとう。人間はネズミに恐怖と嫌悪を感じ、忌み嫌っているのだ。

だが、ネズミは本当に悪い生き物だろうか。私たちが嫌うネズミの特徴・汚さや驚異的な繁殖力、そして不屈の生存能力は、人間との共通点でもある。実際、ネズミは人間の出すごみや食べ残しをあさって生きているのだから、そもそも人間こそが汚いと言えなくもない。

「ネズミは人間そのものです」。こう話すのは、米ニューヨーク市でげっ歯類を研究するボビー・コリガンだ。

ロングアイランドで育ったコリガンは、都会のネズミに詳しい専門家だ。1981年から研究を続け、世界各地の都市や企業から相談を受けている。

ニューヨーク市民は、犬ほどもある大きなネズミを目撃したと冗談を言い合うのが好きだ。しかし、これは都市伝説だ。事実、コリガンがこれまで耳にした最大の個体は、体重816グラムのイラク産のネズミだ。

ところで、ニューヨークで最も数が多いのはドブネズミ(Rattus norvegicus)だ。ドブネズミは穴にすむ動物で、体のなかでは頭骨が最も大きいため、それより幅の広い場所ならどこにでも入り込める。家族単位で暮らし、一度に2~14匹の子を産む。巣は比較的清潔に保ち、小さな縄張りをつくって動き回る。子は生後10週間ほどで性的に成熟し、群れから離れて繁殖相手を探す。

コリガンとネズミ探しに出ると、ニューヨーク市庁舎のそばにある花壇の上を慎重に歩き、ブーツ越しに地面の感触を確かめる。地中に穴がある場所を探し当てると、何度かその上で大きく飛び跳ねた。たちまち1匹のネズミが近くの穴から飛び出し、慌てて逃げ出す。私は少しかわいそうな気がした。とはいえ、多くのニューヨーク市民は市内からネズミを一掃したいと思っている。

ちょうど1週間前、ニューヨーク市長のビル・デブラシオが、公営住宅のネズミを徹底的に駆除する新計画を発表したところだった。同市は3200万ドル(約35億円)を投じ、ネズミが最も多い地区で最大7割を駆除する予定だ。

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