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「女性幹部増やせ」独企業が急ぐ登用・育成の透明化

2019/4/3

(左から)ボッシュのフィリス・アルブレヒトさん、BASF欧州のサオリ・デュボワさん、ドイツ銀行のキルステン・オッペンレンダーさん、ティッセン・クルップ マテリアル・サービスのイルゼ・ヘネさん

「女性にげたをはかせてまで昇進させるのか」「数値目標を掲げないと女性幹部はなかなか増えない」

女性活躍推進の旗振りのもとで、幾度となく聞かれた賛否の声だ。3年前にクオータ制(割当制)を導入したドイツを訪ね、その影響と、有力企業の女性幹部育成・登用における取り組みの最前線を探った。

■「女性もっと登用を」の機運が高まる

女性役員を増やすためのクオータ制が欧州連合(EU)各国に広がる中、一貫して反対の立場を取ってきたドイツ。ところが一転して2016年1月、企業の監査役会を対象に「女性比率を3割以上にすべし」というクオータ制を導入した。

従業員2000人超の上場企業で、監査役会の従業員代表と株主代表が同等である約100社が対象である。女性の候補者がいない場合は空席とするとしたところ、ほぼ全社がその目標を達成した。同時に「フレキシブル・クオータ」と称して、上場企業など約1750社に、取締役からその2段階下の管理職まで、女性比率と数値目標の公表を求めている。

取締役、監査役の経験豊富なエルケ・ベニング=ローケさん

ドイツ企業の監査役会は日本と違い、取締役を選解任するなど重要な決定権を持っている。監査役の女性を増やすことで、女性の取締役や管理職を増やしていこうというものだ。その影響を大手企業の人事担当や女性役員らに尋ねてみた。

「女性幹部と初めて仕事を共にした男性経営者らは、女性にも能力があると気付いた」

欧州企業各社で取締役、監査役の経験があるエルケ・ベニング=ローケさんは、クオータ導入の意義をこう語る。19年2月に開かれたベルリン映画祭では、初めて女性が委員長に就いた。これもクオータ制などにより、社会全体に「女性をもっと登用しなければいけない」という機運が高まったことが影響しているとみている。

ユーディット・ヒュプナーさんは、監査役会で長らく女性一人という経験をした

女性監査役らの声に耳を傾けてみよう。「女性が一人という状況から複数人になり、監査役会の緊張感が和らいだ」と言うのは、コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズで長らく監査役を務め、現在はベルリン清掃人事責任者のユーディット・ヒュプナーさん。「集団の中で少数派が3割を超えると影響力を持つようになる」という、米ハーバード大学のロザベス・モス・カンター教授の説からしても「数の論理」は大きい。

「目指すべきは50%。30%は手ぬるい」というのはベルリン鉄道監査役のイネス・シュミットさん。洋裁学校を出た後、ベルリン鉄道に路面電車の運転士として転職。たたき上げで従業員代表から監査役になった。シングルマザーを運転士として積極採用するなど女性登用の道を切り開いてきた。

ベルリン鉄道監査役のイネス・シュミットさん。路面電車の運転士からたたき上げで監査役に

一方、企業側は一貫して法制化に反対だった。ドイツ産業連盟役員のイーリス・プレーガーさんは「法律で割合を定めるのは間違った方法だ。クオータ制は、管理職に女性が少ない要因を見落としている」と批判する。幼少期の教育、仕事と家庭の両立、古典的な男女の役割分業モデル。女性の昇進を妨げるこうした要因を社会全体で取り除いていくことこそ必要だと主張する。

これに対しては「社会に根深い問題があるのは承知しているが、自然の変化に委ねていては時間がかかりすぎる。クオータを入れたことで、明らかに変化が起きている」(ベニング=ローケさん)。賛否があるにせよ、企業内で問題意識が高まったのは事実のようだ。

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