「犬の性格は飼い主に似る」 研究で認められる

飼い主もイヌも手足がひょろりと長い、ボサボサ頭の飼い主がボサボサの毛のイヌを連れている――。見た目が互いによく似たイヌと飼い主は、はたから見ていてほほ笑ましい。実際にイヌは飼い主と似るという最新の研究成果が、2019年2月15日付けのオンラインの学術誌「Journal of Research in Personality」に発表された。といってもこの研究が注目したのは、外見ではなく性格の類似性についてだ。
論文の主執筆者で米ミシガン州立大学の社会心理学者、ウィリアム・J・チョピク氏は、長年、人間関係の変化について研究してきた。ところが、今回は人間とイヌとの絆に興味を引かれ、関係と変化について調査したという。
調査は、1681匹のイヌの飼い主たちに、自分自身の性格と飼い犬の性格について、質問票に記入してもらう形で行われた。その結果、イヌと飼い主は、性格の特徴が似ていることがわかった。例えば、同調性が高い人は、活動的で興奮しやすい(しかし攻撃的でない)イヌを飼う傾向が、ほかの人の2倍多かった。また、誠実な性格の飼い主は飼い犬について「よく訓練されている」と評価し、神経過敏な飼い主は「自分の犬は怖がり」とする傾向があった。チョピク氏は「落ち着いた人であれば、その人が飼うイヌも落ち着いています」と話す。
一方で調査の難しさもチョピク氏は認めている。というのも、相手が人間であれば、本人に自身について質問できるが、相手はイヌなので飼い主の評価に頼るほかない。ただ、イヌの評価に飼い主のバイアスが強くかかる(飼い主が自分自身の性格をイヌに投影してしまう)のではないかという心配は不要なようだ。というのも、過去に行われた同様の研究で、飼い主以外であっても、イヌの性格については飼い主と同じ評価になる傾向が強いことがわかっているからだ。
ここで疑問が浮かぶ。では、イヌと飼い主の性格に、類似が見られるのは一体なぜなのかだ。論文では、このことは説明されていないものの、チョピク氏は「一つは、その人がどんなイヌを好んで選んだのかということ。もう一つが飼い主のイヌの性格への影響です」と考えている。
人がイヌを迎えるとき、無意識に自身の生活リズムに適応できそうなイヌに惹かれる傾向があると、チョピク氏は話す。「かまってあげる必要がある、やんちゃなタイプのイヌが好きな人もいますし、反対に落ち着いたおとなしい性格のイヌをほしがる人もいます。基本的に、人は自分に合ったイヌを選ぶ傾向にあるのです」
その後、意識的な訓練や日々の関わり合いの中で、人間がイヌの行動を形成していく。つまり人によって、イヌの性格も変わっていくのだ。
行動学者のザジ・トッド氏は、人間の性格の評価に一般的に使われている5つの性格特性(外向性、同調性、誠実性、開放性、ネガティブ感情性)は、イヌに用いられる5つの性格因子(恐怖心、人への攻撃性、動物への攻撃性、活動性/興奮性、訓練への反応性)と違うことを指摘している。それでも、人間とイヌの性格には「非常に興味深いつながり」があり、飼い主に性格が似てくる傾向にあると、トッド氏は言う。
「異なる基準で測定した場合も、強い相関が見られました」と、チョピク氏は言う。
例えば「外向性」は人間に対して使う特徴で、イヌの性格を表すのに適した言葉ではない。ただ外向的な人は、一般に社交的でエネルギッシュだ。活動的で興奮しやすいイヌは、人間の性格で言うところの外向性があると言える。
研究が進めば、チョピク氏の仮説で言うところの「飼い主と飼い犬とで、性格が類似する原因」を切り分けられるようになるかもしれない。つまり、いわゆる「ニワトリと卵どちらが先か」問題に決着を付けるということだ。親切で社交的な飼い主だから臆病ではないイヌを選ぶのか、それとも飼い主の社交的なライフスタイルが飼い犬に徐々に浸透してイヌも快活になるのか――ハッキリする日も来るだろう。
行動学者のトッド氏は、「同調性の高い人は飼い犬を屋外に連れ出す機会が多く、飼い主がこの傾向が強いほどイヌは『社交性が高く』なって、いろいろな物事に慣れていく」と言う。「実は人間がイヌの性格を作り上げている可能性もありますね。私にはそのほうが面白く思えます」
(文 LINDA LOMBARDI、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年3月6日付]
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