バブルとは何だったか 拓銀最後の頭取が手記で語る紀伊国屋書店大手町ビル店

金融本の書棚端の平台の中央に面陳列する(紀伊国屋書店大手町ビル店)
金融本の書棚端の平台の中央に面陳列する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。世界を正しく見る習慣について論じた『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の勢いは、重版が店頭に並んでから1カ月以上たってもまだ止まらない。そんな中、金融の街、大手町でにわかに売り上げを伸ばしてきたのは、1997年に経営破綻した北海道拓殖銀行(拓銀)の当時の頭取が20年の時を経て激動の日々を振り返った一冊の手記だった。

新聞記者がインタビューを手記に構成

その本は河谷禎昌『最後の頭取』(ダイヤモンド社)。著者はタイトル通り、拓銀最後の頭取その人だ。特別背任罪で逮捕され、一審で無罪判決を勝ち取るも2009年に最高裁で有罪が確定、1年7カ月にわたり刑務所で服役した。長年の沈黙を破って自らの体験を語ったのが本書だ。

本書のみそは、第三者が構成者として関わっていること。朝日新聞オピニオン編集部のベテラン経済記者で、18年4月以降、15時間以上、計7回にわたってインタビューし、これに周辺取材を加え、本書に再構成した。読み手に独りよがりな印象を与えかねない一人称の手記なのに、抑制のきいたバランスが保たれているのは、この構成者の手腕によるところが大きいだろう。

■獄中の日々も詳述

本は控訴審で逆転有罪判決の連絡が来たところから始まる。そのなぜを問うことから筆を起こし、次の章では最高裁での判決確定後、収監されていた日々を妻への手紙をもとに振り返る。覚悟を決めて服役した獄中記は思いの外穏やかだ。そこからいったん生い立ちへとさかのぼり、時系列で半生をたどり直していく。厳格な司法一家で育ち、拓銀に入行してまじめにキャリアを積み上げた著者は、バブル期まっただ中の86年に取締役に就任する。

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