「筋トレは認知症予防に役立つ」ってウソ?ホント?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1)ホント
(2)ウソ
正解は、(1)ホントです。
アルツハイマー病の強力なリスク因子は「運動不足」
認知症は、何らかの原因で脳がダメージを受けて、記憶力や思考力、判断力や理解力といった脳の認知機能が少しずつ低下していき、日常生活や活動が困難になるまで支障を来した状態のことを指します。
日本の65歳以上の約7人に1人が認知症患者と推計されています。正常と認知症の中間の状態とされる軽度認知障害も合わせると、65歳以上の約4人に1人が認知症またはその予備軍となっています(2015年厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」より)。
「近年の研究から、認知症は生活習慣病だと認識されるようになっています。脳血管性認知症の原因となる脳血管障害(脳卒中)は、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病が引き起こします。さらに、運動不足が認知症のリスク因子になることもほぼ確実と見られていて、特にアルツハイマー型認知症は、様々な要因の中でも運動不足が強力なリスク因子だとする研究報告があります」(表1)。そう話すのは、筑波大学大学院スポーツ医学専攻教授の久野譜也氏です。
では、運動習慣は脳にどのような影響をもたらすのでしょうか?
「運動で体を動かすと、筋肉組織からイリシンという物質が分泌されます。イリシンは血流に乗って脳に運ばれると、脳内でBDNFと呼ばれるたんぱく質の分泌を促します。BDNFは『脳由来神経栄養因子』と呼ばれ、脳の神経細胞の働きを活発にして、細胞の新生や再生、シナプスの形成を促すことが分かっています。つまり、筋トレで筋肉を刺激し、有酸素運動で血流を促すことで、脳の活動性を高め、認知症の予防につながることが示唆されているのです」(久野氏)
「十数年前には、指先を動かすなど細かな動作を行うと、脳を活性化できるといわれていましたが、近年では、大きな筋肉群を動かしたほうが脳への刺激が高まるといわれるようになってきています」と久野氏は話します。太もも(大腿四頭筋やハムストリングス)など下半身の大きな筋肉を鍛えると、転倒を予防し、基礎代謝を維持・向上できることが知られていますが、それだけでなく、認知症の予防につながることも期待できるのです。
「将来認知症になるリスクを下げるためにも、筋トレと有酸素運動を習慣にして、積極的な外出を心がけてほしいと思います。積極的に出かけることで、新たな発見や人との交流も生まれ、脳をさらに活性化することができます」と久野氏はアドバイスしています。
(日経Gooday編集部)
[日経Gooday2019年2月25日付記事を再構成]
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