予定通りがんになった医師 「仕事は辞めなくていい」がんになっても働き続けたい~医師・唐澤久美子さん(上)

日経Gooday

「がんになったら働けない」と多くの方が思っているようでは困りますね。がんでも仕事ができることを患者さんがご存じないのなら、「仕事は辞めなくてもいい」と医療現場の人が言ってあげるべきでしょう。「病気だから仕事を辞めて、治療に専念してください」というレベルの医療者がいるとしたら、それはよくない。患者さんの社会生活のこと、仕事のことを理解できるように、教育していく必要があると思います。

各学会が出している患者向けの本は参考にしやすい。上は『患者さんと家族のための放射線治療Q&A 2015年版』(日本放射線腫瘍学会編)

ただし、患者さんも医師の言葉をうのみにしないで、主張すべきことはしないといけないですね。信頼できる情報源をもとに自分の病気のことを勉強して、主治医の言うことが理解できるくらいの知識を、ある程度身に付けてほしいです。話を聞いたけれど頭の中が真っ白で、どうしていいのか分からない、という状況はよくないと思います。

国立がん研究センターの一般向けウェブサイト「がん情報サービス」(https://ganjoho.jp/public/index.html)を見たり、放射線治療を受けられるなら日本放射線腫瘍学会、乳がんの方なら日本乳癌学会など、各学会で出している患者さんのための診療ガイドラインの本を読んだりして勉強されるといいですね。

機能と形態の温存が放射線治療の最大のメリット

――唐澤さんは、2019年2月2日からロードショーが始まったドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」(全国で順次公開)に、対話者の一人として出演されています。映画のナビゲーターである女優・鳴神綾香さんに、放射線治療について説明されました。改めて放射線治療のメリットをお教えください。

「治療の選択次第では、それまで通りの仕事を続けることも可能です」

放射線治療は手術と同じように、がんがある部分だけを治療する局所療法です。最大のメリットは、機能と形態の温存ができること。映画の撮影時にお話しした舌がんなど頭頸部のがんは、手術で取ると日常生活に支障が出るので、放射線治療が第一の選択肢になります。舌がんになった落語家の方は、手術で舌を切除するとしゃべれなくなるので、切らずに放射線治療を受けて真打ちとしてご活躍です。

欧米ではがん患者さんの半分以上が放射線治療を受けていますが、日本ではいまだに30%程度。先進国の中では大変低いです。被ばく国であり、過去に放射線被ばく事故が起きたことで「放射線=悪」というイメージを持つ人がいるからでしょう。ですが、日本には放射線治療施設が約800カ所あり、国の面積から考えると実は多いんです。日本放射線腫瘍学会では放射線治療の良さを伝えるために、患者さん向けの講演会の開催やウェブサイト(https://www.jastro.or.jp/)での情報提供などを行っています。

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唐澤さんのインタビューの後編では、出演したドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」でも言及していた「QOL(生活の質)は人生の質」という考え方を紹介する。

(ライター 福島恵美、カメラマン 村田わかな)

唐澤久美子さん
東京女子医科大学 医学部長・放射線腫瘍学講座教授。1986年東京女子医科大学放射線科入局。同大学放射線医学講座講師、順天堂大学医学部放射線医学講座助教授などを経て、2011年放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院治療課第三治療室長。 15年東京女子医科大学放射線腫瘍学講座教授・講座主任。18年4月から同大学理事・医学部長。専門分野はがん放射線療法(とくに乳がんなど)、粒子線治療。放射線治療専門医、がん治療認定医、日本乳癌学会乳腺専門医

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