大学進学、奨学金手続きは要確認 説明会出席が必須
大学生のためのマネー講座(4)
進学する大学や大学院が決まったら、やっぱり気になるのは学費のことですね。親だけでなく、学生のみなさん自身も「奨学金を利用した方がいいのかなぁ…」と少し気になっている頃ではないでしょうか。とはいえ、具体的にどうやって借りたらいいのかよくわからないという人が少なくありません。
そこで今回は、最もポピュラーな日本学生支援機構(JASSO)について「在学採用」の流れと留意点をお伝えします。
春は「奨学金アンテナ」を全開に
JASSOの奨学金の申し込みは年中行っているわけではなく、決まったタイミングに手続きをする必要があります。そのタイミングとは、ずばり春。例年でいえば、5~6月をめどに所定の書類を添えて申し込みます。
「確か高校のときは春と秋に説明会があったはず」と思った人は正解です。高校の「予約採用」の際は2回チャンスがありましたが、大学に入ってからの「在学採用」は春の1回ぽっきりです。4月に奨学金申し込み説明会が開催されますので、奨学金を希望するなら必ず出席しましょう。説明会に出席しなければ、奨学金を申し込めないしくみになっていますので注意が必要です。
進学して様々なやるべきことに右往左往しているうちに、説明会が終わっていたり、説明会に出席していても手続きの締め切り日が過ぎてしまっていたり……ということもありがちなので、スケジュール管理が重要です。実際のところ、「せっかく大学に入学したものの秋期の学費を払えない」「学費を払うためにブラックバイトに陥り授業に出られなくなった」といった理由で中退する人は少なくありません。学費の手当てに不安がある状況であればなおのこと、奨学金の情報は最優先でチェックしておきたいところです。
大学で申し込むJASSOの「在学採用」は貸与型のみ
大学に進学してから利用できるJASS0の奨学金は「貸与型」のみです。
「あれ? 給付型奨学金が始まったって聞いたけど」という人もいますね。実は、大学に行きたいものの学費が用意できなくて進学をあきらめようと考えている人に利用してもらうための制度が給付型奨学金です。つまり、経済的なゆとりの少ない高校生に資金の手当てをすることで受験を後押しする狙いがあるのです。そのため、給付型は高校3年生の春の「予約採用」時のみの募集なのです。「在学採用」はすでに大学に進学してからの募集なので、残念ながら用意されていません。
さて、JASSOの貸与型奨学金は、"奨学金"というやわらかい名前ではありますが、借金なので、後でちゃんと返済する必要があります。無利子で借りられる、つまり、借りた額だけ返済すればよい「第一種奨学金」と、利子をつけて返済しなければならない「第二種奨学金」に大別されます(図表1)。
そう聞くと、同じなら第一種奨学金を借りたいところですが、当然に、第一種奨学金のほうがクリアすべき条件が厳しめです。借りられる額は図表2の選択肢の通りですが、この額では足りないという人は第二種奨学金との併用も可能です(年収要件が変わりますのでご確認ください)。
なお、JASSOのホームページでは、借りる額に応じた奨学金貸与・返還シミュレーションができます。親などとも話し合った上で、将来自身が返済する際に無理のないのはいくらまでなのか、時間を見つけて試算しておくとよいでしょう。
申し込み書類を準備する"手間ひま"を甘く見ない
奨学金の申し込みに必要な書類は、きょう書いてあす出せるようなものではありません。気をつけておきたいポイントを3つほど紹介します。
一点目として「貸与確認書」では借りる人と、親権者または未成年後見人の署名・なつ印が必要です。それぞれ別のものを押印することが求められます。たとえば自宅住まいで親権者が両親というケースなら、ご自身分と両親分の合計3種類の印鑑が必要になります。
そして、2点目としては、収入要件を満たすことを示す書類の「年収(見込)証明書」の作成に思ったより時間がかかることです。「手持ちの源泉徴収票で大丈夫だろう」という大人の常識とは異なり、JASSO所定の様式で親(申込日現在の家計維持者)の勤め先に作成してもらって添付する必要があるのです。締め切りはまだ先だからとのんびりしていると間に合わない可能性も。早めに親に様式を渡して依頼しておきましょう。
続いて3点目は、必要書類のことです。単身赴任者や長期療養者の家族がいると、それに関わる必要書類があります。たとえば親が単身赴任中の場合でも、前述の親権者の署名・なつ印は本人の筆跡であることが求められるため、書類を郵送するなどの手間がかかります。加えて、家計維持者が単身赴任中であれば、単身赴任実費計算書という書類の提出も。
このほか、学生本人の住民票も必要なので、時間を見つけて役所で発行してもらっておきましょう。
無事に採用された後の流れを知っておこう
さて、申し込みの書類を提出した後の流れも、ざっくりと確認しておくと安心です。まず、大学が学業成績や家計状況などを審査して、適格者をJASSOに奨学生候補者として推薦します。その後、JASSOが審査して採用の判断を行う流れで、その採否が大学に通知されて、後日、大学の掲示板などを通じて確認できるようになります。
ここで気を付けたいのは、採用が決まった学生は採用者説明会への出席が必須になっている点です。この採用者説明会で受け取った返還誓約書は、記入の上、必要な添付書類をそえて期限までに提出する必要があります。もしも提出をしないと奨学金の採用が取り消され、それまでに振り込まれた奨学金があれば即時返還が求められます。
こうしてみてくると、お金を借りるのはけっこうたいへんですね。奨学金は学生であるみなさん名義の借金なので、最後まで気を抜かないように手続きしてみてくださいね。
兵庫県神戸市生まれ。慶応義塾大学商学部卒。損害保険会社、生命保険会社を経て1998年にFPとして独立。現在に至る。ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャルプランニング技能士。千葉商科大学大学院MBA課程(会計ファイナンス研究科)客員教授。2児の母。主な著書に「『教育費をどうしようかな』と思ったときにまず読む本」(日本経済新聞出版社)、「奨学金を借りる前にゼッタイ読んでおく本」(青春出版社)。
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