味の素が「グローバルな食品企業を目指す中では、日本だけで通用していたやり方を変えないといけない、という危機感が大きい」という

白河 特に地方の赴任が前提となる営業部門などは遅れがちなんでしょうか。業界にかかわらず女性の営業社員は勤続10年で10分の1にまで減ると言われています。

野坂 そうですね。これも日本の商習慣における課題をそのまま反映していると思うのですが、実はここにもアンコンシャスバイアスがあるのだと思います。「男性であれば単身赴任は受けやすい」というのも根拠のない思い込みですし、人それぞれに事情があるはずですから。採用・任用・評価の3つの面で仕組みを変えていかなければ実現できないこともある。「仕組み」と「意識」の改革、両方必要だと思います。

白河 商品力が強いメーカーにおいては、「変化しなくても生き残ってきた」という背景があり、だからこそ危機感を感じにくい。御社はまさにそういう会社だったと思うのですが、なぜここまで大掛かりな改革に取り組もうと、かじを切られたのでしょう?

野坂 やはり世界で戦えるグローバルな食品企業を目指す中では、日本だけで通用していたやり方を変えないといけない、という危機感が大きいと思います。西井は特にブラジル赴任時代に効率を重視した働き方に触れ、ショックを受けたようです。私も上海に赴任したときには、リポート先が明確で根回しなしで仕事が早く進む文化で働き、意識が大きく転換しました。

白河 世界に触れる実体験を持ち、「世界で戦うにはここまでやらなければいけない」とトップが認識したことが改革を推し進めているのですね。社内の女性たちは変化をどうとらえているのでしょうか。

野坂 現場の声から実感するのは、「お先に帰ります」が普通に言える空気がかなりできあがってきたようです。育児休業を取得する男性も増えてきました。今、20%くらいです。

白河 大きな変化ですね。

野坂 さらに言うと、毎日16時半には会社を出られるので男性社員も、「育休を取得しなくても十分に家事育児に参加できる」という声はよく聞きます。コアタイムなしフレックス制度を使って、16時半より前に帰ることもできますし、在宅勤務も週4回まで可能となれば、奥さんから「育休を取らなくても、何かあったときに家にいてくれたらいいわ」と言ってもらえるそうです。育児中の社員に限らず、「台風の日にはってでも出社する」という風景は見られなくなりました。

白河 「雨の日でも風の日でも、会社に行くことが尊い」というアンコンシャスバイアスも払拭できた。逆に、「16時半を過ぎても、もっと働きたい」という人はいないんですか。

野坂 年間で1800時間となるように繁閑に応じて調整していけばいいという仕組みにしています。 新製品開発前など、どうしても業務が重なる時期もありますから。でも、基本的には前倒しの働き方が進んできたと思います。会議は基本的に16時までに終了する時間で設定されますし、無駄をなくすためのペーパーレスも普及しています。ペーパーレスを推進することで、資料を印刷する時間だけでなく、保管や廃棄に要する時間まで付随して省けるようになるので、効果は大きいですね。