地球外生命、存在は確実 地上と宇宙の探査最前線

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/3/3
ナショナルジオグラフィック日本版

近年、太陽系の外に、生命が存在すると考えられる惑星が数多くあることがわかってきた。今や問題は、地球外生命が存在するかよりも、その星をどうやって見つけるかだ。ナショナル ジオグラフィック2019年3月号「地球外生命 探査の最前線」では、その具体的なプランを科学者たちに聞いている。探査技術の進歩で、大発見の可能性はかつてなく高まっている。

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現在、およそ4000個の系外惑星の存在が確認されている。その多くが2009年に米航空宇宙局(NASA)が打ち上げたケプラー宇宙望遠鏡の観測による発見だ。ケプラーのミッションは、空のごく小さな領域にある約15万個の恒星を観測し、惑星を伴った恒星がどのくらいあるかを調べることだった。ケプラー宇宙望遠鏡の観測でわかったのは、宇宙には恒星よりも多くの惑星があり、その4分の1は「ハビタブルゾーン」と呼ばれる領域に位置する地球サイズの惑星だというものだった。

「ハビタブルゾーン」は、生命が存在する可能性のある領域のことで、極端に高温でも寒冷でもない。太陽系がある天の川銀河には少なくとも1000億個の恒星があるから、最低でも250億個は生命を宿す惑星があるとみていい。そして、宇宙には天の川銀河のような銀河が何兆個もある。

銀河に惑星があふれていることがわかって、地球外生命の探査に大きな弾みがついた。多額の民間資金が寄せられたおかげで、これまでよりはるかに決定プロセスが迅速で、失敗のリスクを恐れない研究プロジェクトが始動。NASAも宇宙生物学の分野に注力するようになった。大半のプロジェクトが地球外生命の痕跡を見つけることを目指す。新たな探査対象、新たな資金、コンピューターの性能のさらなる向上も見込める今は、知的生命探しが活気づいているのだ。

すばる望遠鏡での挑戦

フランス北部出身のオリビエ・ギヨンは、43歳の今、米ハワイ島のマウナケア山頂にある13基の望遠鏡の一つ、日本の国立天文台のすばる望遠鏡で観測を行っている。反射鏡の口径は8.2メートル、一枚の鏡としては世界最大級を誇る。標高4205メートルのマウナケアでの観測環境は、高さも空気の澄み具合も世界屈指といえる。

ギヨンの専門は、光のゆがみを解消する技術の開発だ。その技術を駆使すれば、すばるの巨大な反射鏡をもってしても見えないものを、垣間見ることができる。

「一番知りたいのは、そこに生物の活動があるかどうかです」。彼は空を指さして言った。「あるなら、それはどんなものか。恒星の光のなかから惑星が放つ反射光を抽出できれば、こうした疑問に答えを出せます」

まばゆい恒星の光のなかから、地球サイズの岩石惑星が反射するかすかな光を取り出そうとするのは、目を細めて、投光器のすぐ前にいるコバエを見ようとするようなものだ。とても可能とは思えないし、実際、既存の望遠鏡では不可能だ。しかしギヨンは、地上に建設される次世代の望遠鏡に特殊な装置を搭載することで、それが可能になると考えている。そして、ギヨンが開発したのは、まさにそんな機能をもつ装置だ。その名も「すばる望遠鏡用極限補償光学装置」。略して、SCExAO(スケックス・エー・オー)と呼ばれている。

すばるをはじめ、地上に設置された望遠鏡は、宇宙望遠鏡よりもはるかに大きな集光力をもつ。何しろ口径8メートル超の巨大な望遠鏡をロケットで宇宙に運ぶことなど、今の技術では不可能だからだ。しかし地上での観測には深刻なデメリットがある。大気が邪魔になるのだ。気温の変動に伴い、大気が揺らぎ、光が不規則に屈折する。星が瞬くのもそのためだ。SCExAOの仕事は、こうしたゆがみをなくすことだ。次世代の望遠鏡にSCExAOを搭載すれば、最終的には目に見える光の点として、惑星を撮像できるだろう。そして、この画像に対してスペクトル分析を行えば、生命の痕跡、いわゆる「バイオシグネチャー」を探す作業に入れる。

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