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ビール低迷、原因は「とりあえず生」 キリンHD社長 キリンホールディングス社長 磯崎功典氏(上)

2019/3/2

「クラフトビールの魅力は種類の多さで、キリンだけでは限界」と磯崎社長

――今はクラフトビールがブームになっていますが、本来クラフトビールというと、小規模な醸造所で多品種少量生産したものを売っていくものと聞いています。キリンビールのような大企業が造るクラフトビールというものには、少し違和感があるのも事実です。

そうですね。ただ、小規模の生産者の方は、あらゆることで制約があります。原材料、缶やびんといった資材の調達は大変だし、大企業に比べると高くついてしまう。物流ルートの確保もたいへんです。例えばコンビニエンスストアでも、小規模な醸造所が全国から売り込みに来ても困るでしょう。成功して規模を拡大することになっても、資金調達が大変です。

そこで「タップ・マルシェ」という、3リットル入りの特殊なペットボトルを4本組み合わせたビールサーバーを開発し、小規模なクラフトビールメーカーが使いたいと言ってくれば提供するようにしています。これを飲食店に置けば、4種類のクラフトビールを提供できるわけです。もちろんタダではないから、うちもビジネスになる。小規模メーカーの方は販路の拡大がしやすくなる。

クラフトビールの魅力は種類の多さです。キリンだけでは限界がある。だから、小規模醸造家の方たちと協力する形で、クラフトビールの魅力、市場を広げていこうとしています。星野リゾートの星野佳路氏が創業したヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)には、キリンが3分の1出資しています。

――20年以上も前になりますか、今のクラフトビールに近い形の「地ビールブーム」というのがありましたね。

ありました。あれは品質が低すぎましたね。私も飲んでみて、「これ臭いな」と言ったら、醸造の専門家が「それ、発酵不良です」と言っていました。あのとき、キリンは一切手を出しませんでした。では、なぜ今クラフトビールに力を入れているかというと、お客様がマスプロ・マスセールスの商品に興味を示さなくなってきたからです。

大量生産し、テレビで大量のCMを投入すれば売れる時代は終わったのです。もちろんそれでヒットする商品がないわけではありませんが、ビール類に関しては、お客様はそれぞれ、自分に合ったものを求めている。それに応えなければいけない時代になってきていると思います。

――次回は、日本人のビールの味の好みの変化や、キリンの今後の取り組みについてお聞きします。

磯崎功典(いそざき・よしのり)
1953年生まれ。77年慶応義塾大学経済学部卒業。同年キリンビール入社、神戸支店業務課配属、87年海外留学(米国)。94年経営企画室室長代理、96年マーケティング本部マーケティング統轄部企画担当部長代理。98年キリンホテル開発。2001年キリンビール広報部報道担当部長代理、04年サンミゲル社取締役。07年キリンホールディングス経営企画部長。08年執行役員経営企画部長、10年常務、12年キリンビール社長。13年キリン社長兼キリンビール社長、15年キリンホールディングス社長兼キリン社長。

(ジャーナリスト 加藤秀雄)


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