16時半退社が定時 味の素は誰もが働きやすい会社に味の素 野坂千秋常務執行役員(上)

意識変革を促すための取り組みの一つが「アンコンシャスバイアス」を解消するための研修だという

男性社員が家事に参加する機会が増える

白河 西井孝明社長にインタビューさせていただいていたときに「16時半にみんなが帰れば保育園へ迎えにいく人も後ろめたくない」とおっしゃっていましたが、その意識転換が重要なんだと改めてわかります。「プロ経営者」として知られるある方が「女性活躍だけを先にやったら失敗する。働き方改革もセットでやらないと浸透しない」とおっしゃっていたのですが、まさにセットでの戦略を実践しているのですね。

野坂 はい。女性のためだけではない、という姿勢を強調しています。「8時15分出社、16時30分退社」を全社で導入することは、長時間労働を是とするこれまでの働き方を最も分かりやすく否定するメッセージとして、社内外に伝わったのではないかと思います。

白河 本気で女性に活躍してもらうには男性の働き方も変えなければならない。でも、なかなかここまで本気で取り組む会社は珍しいです。「男性の働き方まで変えられますか?」と聞くと、「いや、そこまでは……」と口ごもる企業が大半ですから。非常に画期的ですし、広がってほしいと思います。実際、事業にプラスの効果も出てきているのでしょうか。

野坂 効果の実証はまだこれからになりますが、確実に言えるのは男性も早く帰宅するようになり、家事に参加する機会は増えていること。例えば、スマートスピーカーのような生活に密着した新製品を試したり、スーパーで買い物をしながら陳列棚を見たりと、当事者として生活者感覚を磨く時間につながっています。考えてみれば、これが食品メーカーとしての本来あるべき姿ですよね。経営視点に立てば当たり前の施策ともいえます。

「こういう働き方が普通だよね」という思い込みや偏見をいかに壊していくか。その意識の転換がなければ、新しい制度も文化も生まれません。企業内の選択というのは、どうしても多数派・主流派の考え方に引っ張られてしまいますから、いつのまにか少数派にとって居心地の悪い不公平な状況が生まれてしまうことが多い。その問題に意識的に目を向け、ニュートラルな感覚で改革していこうという取り組みを強化しています。

白河 その取り組みの一つが、18年から実施されているという「アンコンシャスバイアス」を解消するための研修ですね。制度だけでなく「意識面」からのアプローチをする取り組みだと思うのですが、具体的にはどのように進めているのでしょうか?

経営陣向けに実施したアンコンシャスバイアス研修の風景(写真提供:味の素)

野坂 18年は外部講師の先生を呼んで計3回、半日研修を行いました。最初に受けたのは経営層だったのですが、非常に盛り上がったんです。「偏見を持つのはダメです」というお叱りではなく、「誰にでも偏見はある。その偏見に気づいて行動することが大事です」という説明でしたので、自己開示しやすい雰囲気になりました。

日常に起こりやすい事例も交えて無意識の偏見に気づくワークショップでは、「ああ、これも偏見か!」とあちこちから声が上がり、経営層も多くの気づきがあったようです。