役員の影のように同行、経営体感 女性幹部候補を育成

2019/2/19

自分らしいリーダーを目指そうと考えるきっかけに

KDDI商品企画本部サービス企画部長の金山由美子さん(47)は役員補佐1期生として専務付補佐を1年半務めた。「その時にできた社内のネットワークは今でも強みになっている」と成果を実感する。役員は関わる人や業務の幅も広い。「キーマンは誰か、どの部署でどの仕事が動いてるのかが理解できた」

金山さんが役員補佐を経て部長職になったのは、以前の業務と異なる営業サポート部門だった。かつては所属部署の業務で精いっぱいだったが「組織力を上げるために何をすればいいのか考えるように変わった」。自身のマネジメントにも生かしている。

「シャドウイングはリーダーを目指すきっかけになった」。こう話すのは富士通の平山陽子さん(40)だ。富士通は女性リーダー育成プログラムの一環で幹部同行を導入する。短時間勤務や子育て中の人も多数参加。上司が育成計画を立て、マネジャークラスから部長、役員など複数の立場に同行し気づきを得る。

以前は3人の子育てに日々奮闘。短時間勤務で働き「キャリアを考える余裕はなかった」(平山さん)。仕事も家庭も完璧じゃないとリーダーになるキャリアは目指せないと思っていた。

幹部同行すると、仕事の進め方や信念が人によって異なり、多様性があることを知った。自分らしいリーダーを目指そうと考えるきっかけとなった。登用試験を受け、今春から幹部社員になる予定だ。

法政大学の武石教授は、女性は幹部社員と接する機会が男性より少ないと指摘する

東京証券取引所は18年に上場企業に課す「企業統治指針」を改訂。取締役におけるダイバーシティを求め、女性や外国人の登用を促している。

多様性の推進で透明性を高めた組織運営に向け女性幹部の育成は必須だが、法政大学キャリアデザイン学部の武石恵美子教授は「女性が経営目線で考える機会はまだ少ない」と指摘。女性の役員や管理職が少ないことから、男性社員の方が幹部と接点を持ちやすい現状がある。差を埋める上でシャドウイングで集中して学ぶのは効果的だ。

武石さんは、「幹部同行などに、まずは女性を参加させることが大切。失敗したら大変と大切に育てすぎるのではなく、大丈夫と誰かが背中を押すことが女性の育成には必要だ」と語る。

意識の差は「機会の差」 ~取材を終えて~

「経営幹部のイメージがつかないからと、リーダーになることに尻込みする女性は多い」とKDDIのD&I推進室長、間瀬英世さんは指摘する。キャリアを巡って男女に意識の差があるのではなく、「機会の差」があるというわけだ。幹部の職務を知る機会の差を残したまま、女性幹部育成策を様々に実施しても効果は限られるだろう。

シャドウイングを実施した企業では成果も出ているが、導入している企業は少ない。受け入れる幹部の負担が大きいのも確かだ。それだけに制度導入には経営トップの意向が表れる。ダイバーシティを推し進める企業の姿勢をしっかり示すことが、女性が幹部を目指す環境整備に欠かせない。

(大城夏希)

[日本経済新聞朝刊2019年2月18日付]