こうした努力が奏功し、18年春の進学実績では東大合格者が14人(浪人含む)と2年前より6人増加。医学部に進む理科3類にも現役2人が合格した。前橋市は人口10万人あたりの医師数が全国平均を大きく上回り、医学部志望者が多い。18年は国公立大医学部医学科の合格者が28人と、全体の15%を占めた。

OBなどの企業経営者を呼んで講演会

ただ、気になる数字もある。国公立大の総合格者数は181人で、2年前より13人少ない。さらに私立大の合格者は519人と同120人も減った。原因について大栗氏は県内に増えている中高一貫校の存在を挙げる。「優秀な生徒が若干そちらに流れている可能性はある」。このため、18年夏には初めて小学生と保護者を対象にした学校説明会を開いた。高崎高校や公立中学校の教員も登壇し、各校の魅力をアピールしたという。

もう一つ、大栗氏が指摘するのは「生徒にやらされ感があるのではないか」という点だ。学校側がカリキュラムを用意し、生徒はまじめに取り組むが、それだけでよいのか。大学進学だけでなく、その後の社会人人生を考えても「変化の激しいこれからの時代には、主体的に自分で学習する人材が求められる」。

では、生徒の主体性をどのように育んでいくか。具体策の1つは17年に設置した、学習意欲や探究心が強い希望者を中心とした「ASクラス」だ。ASとはAspiration(大志や向上心)の略。2~3年生の文系と理系に1クラスずつ置く。カリキュラムは他のクラスと同じだが、進度を速め、余った時間で応用的な学習のほか、グループによるテーマ探究、プレゼンテーションなどに力を入れる。

2つ目は将来の働き方まで見据えたキャリア教育の充実。同校では毎年10~11月の開校記念式典に合わせ、OB講演会を開いている。ここ数年は日商会頭の三村氏のほか、ホンダ会長を務めた青木哲氏ら企業関係者を増やしており、18年はNTTドコモの吉沢和弘社長が講演。サッカー部での思い出や、本業に関係する次世代通信規格「5G」で社会がどう変わるかといった話に生徒らが熱心に耳を傾けた。

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事業アイデアコンテストでファイナリストに