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なやみのとびら、著名人が解決!

父の女装に病みそうです 作家、石田衣良さん

2019/2/14

作家。東京都生まれ。2003年「4TEENフォーティーン」で直木賞。石田衣良のブックサロン「世界はフィクションでできている」主催(https://yakan-hiko.com/meeting/ishidaira/top.html)

会社員の父が休日になると、気合の入った女装で外出していきます。隠れて女装していた父を私がたまたま目撃し、以降は私の前で堂々と女装するようになりました。「やめてほしい」と訴えても取り合ってくれず、仕事で別居している母も「病みそう」とショックを受けています。どうしたらいいでしょうか。(東京都・女性・20代)

某公共放送の福祉番組でMCをしていたとき、あなたのお父さんと同じ人に会いました。40代なかばのその人は大手電機会社に籍をおいたまま、女性になりたいというのです。

最初はスーツの下にストッキングを履(は)くくらいだったのですが、女装への思いをこらえ切れなくなり、化粧を覚え、女性の服を買いこみ、会社へ女装していくようになりました。

社内の風当たりは猛烈で、妻と子どもは出ていき家庭崩壊。お風呂のなか、ひとりで声をあげて泣く日々だったと。でも女装は断固やめなかった。

確かに世間一般の考えなら、そこまで自分や周囲を傷つけるなら、女装をあきらめたほうがいいというのが正論でしょう。でもそういうわけにはいかないのです。ジェンダーはその人をその人らしくする根本にかかわる問題だからです。

娘としてお父さんが女装するのは気もちが悪い、止めて欲しいというのはよくわかります。でも、そこで一方的に相手を「変態」と決めつけずに、腹を割って話しあってみたらいかがですか。どういう思いで女装しているのか、子どものころはどうだったのか、ほんとうに好きなのは異性か同性か。

女装が趣味程度なら、休日のあいだだけ目をつぶればいいし、本気で女性になりたい、男性の恋人がほしいということになれば、お母さんを巻きこみ離婚を含めた本格的な対応を考えなければなりません。

夫婦は別れたら他人ですが、娘のあなたはそうはいきません。お父さんとお母さんの架け橋になれるのは、あなたしかいないのです。きちんとお父さんの立場を理解しようと努力したうえで、家族の難問に対処してください。お母さんといっしょにお父さんを責め続けるのは逆効果です。感情を抑えLGBTについて勉強してみてください。

さて、冒頭の男性は人事部に性転換の希望を訴えたそうです。担当者は社歴を振り返り、これまで2人のトランスジェンダーが存在したことを認め、今後さらにこうした事態が増えることを見越して、性転換について新たな社則をつくりました。「世間」は動いています。あなたはどうしますか?

あなたの悩みをサイトにお寄せください。サイト「なやみのとびら」(https://www2.entryform.jp/tobira/)から投稿できます。

[NIKKEIプラス1 2019年2月9日付]

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