ライン削りを楽しんでいた自分~熱意ゼロから見つけた世界目指せソーラーカー世界一(7)

工学院大学ソーラーチーム

工学院大学ソーラーチーム

工学院大学ソーラーチーム、戦略班の金城義樹です。といっても、すでに2018年3月に卒業し、今は社会人1年生として飛び回る日々です。在学中、ソーラーチームにどっぷりはまった2年間、この期間に感じたことについてお話しようと思います。

プレッシャー、不安、そして無気力

2015年の前回大会で準優勝したソーラーカー「OWL(アウル)」

「世界大会で戦えるソーラーカーを作る」。そんな無理難題のような課題を突き付けられたのは、私が研究室に配属されて少し経ってからのことです。それまでは、まさか自分がソーラーカーの活動に関わることなど考えもしませんでした.

正直なところ、ソーラーチームに所属し活動している学部1.2年生とは違い、大学院生だった私や同期の研究室メンバーは「ソーラーカーやりたいです!」といった強い熱意があったわけではありません。電気的な知識もなければ、車両ボディーが何で作られているかも分からない。そのうえ、チームは前回の世界大会で準優勝しており、みなさんが知っているような大手企業のスポンサーの期待も背負っていました。期待に応えなければならないプレッシャー、しかし知識・経験はゼロ、そして何より活動への熱意がない......。そんな不安要素満載で私のソーラーカー活動はスタートしたのです。

もちろん、ものづくりが大好きで機械系の学科に入学したので、ソーラーカーに全く興味がなかったわけではありません。しかし、いざ活動の日々に身を投じてみると、想像以上に分からないことだらけ。研究室の先輩たちは私たちが本格的に活動し始めて間もなく卒業しました。そのため、先生のアドバイスや先輩たちの残したデータをもらいながら、自分なりに動いてみるのですが、考えてはやり直し・ダメ出しの繰り返し。土日やアルバイトの時間を全て犠牲にして時間を費やしましたが前進できず、不安だけが膨れていきました。そのうちに、大学生らしい生活を謳歌している他者と比べて落ち込んだり、朝起きることが億劫になったりしました。「あの時、別の研究室に入っていたら」なんてことを考えながら、自分の状況を後悔する日々。今思えば鼻で笑うような、ちっぽけな悩みだったと思いますが、当時は相当に参っていたのです。

「知好楽」先輩からのメッセージ

しかし、徐々に考え方が変化していきました。何もかも投げ出したくなった状況が続いていたのですが、全てをやり切った今の結論とすると、とても楽しかったのです。それは単に活動が面白くなったのではなく、逆境の中でも楽しめる自分オリジナルの居場所を見つけることができたからです。先輩が残してくれた論語の言葉があります。「知好楽」。ぜひみなさんも調べてみてください。簡単に言うと、「知識ある人も、好きでやっている人も、楽しんでやっている人には敵わない」ということだそうです。

スクリーン成形作業の様子。マスキングテープ(写真中の黄色いテープ)に合わせ少しずつ削りますが、工具を当てる時間や力、方向に繊細さが求められました

この知好楽を自身に当てはめてみると、思い返すのは車両製作のときです。私はソーラーカーのスクリーン(ドライバー窓)の最終成形を丸一日かけて行っていました。ベルトサンダーという工具を使って,0.1ミリ単位で削る作業でした。全身粉だらけになりながら全周5mほどのラインを削るのですが、削り終わりのたびに削ったラインを指でなぞっていました。「ここの辺り若干膨らんでいる、指にひっかかる感じが気になる」なんてことを念仏のようにひとりで唱えながら、気に入らなければやり直すことを繰り返していました。先ほど「丸一日かけて」と言いましたが、本当ならそんなに時間をかけなくとも要求された製品は完成していたはずです。しかし、このときは完全に「自分だけの世界に入っていた」のです。時間を気にせず、ただ削り、自分の納得のいくものを作る、それだけでした。

レース直前で破損した車両を修復している様子。このときは本当に苦しかった……

当時は、これを「楽しんでいた時間」との認識はありませんでしたが、今思えば心の奥底で楽しんでいたのだと思います。世界大会開催地であるオーストラリアでの英語生活に必死になったり、レース直前で事故を起こし損傷したソーラーカーを修繕したり、レース中のバッテリ残量ゼロから復帰し完走したことも、全部自分だけの世界に入って楽しんでいた思い出です。この楽しみに気付くのに2年もかかってしまいました。もっと早くに気付いていれば、もっと楽しめていたはず。少し残念です。

「世界大会参戦報告会」では、お世話になったスポンサー企業の方々をお招きし、チームへのサポートのお礼とレースの裏舞台をお話ししました

そんな苦労話や、理解してくれなさそうな楽しい自慢話をしながら飲んだお酒は、なかなかに美味しいものでした。世界大会終了後はスポンサーの方々との飲み会が続いたのですが、「本当に楽しそう。私も学生時代そんな経験をしてみたかった」とおっしゃっていました。社会に出てみると、想像以上に理不尽で辛い世界だという話をよく聞きます。しかし、こういった経験をしていると、窮地の場面でも楽しみに酔いしれながら過ごせるのかな、人生を楽しめる大人って、きっとそんな生き方ができる人たちなのかなと最近は思っています。

今回の記事を通してお伝えしたかったのは、表題にもあるように「自分が全力で楽しめるオリジナルの世界を見つけよう」ということです。嫌な仕事や作業も全力で取り組んでいると、ある時自分だけの居場所を見つけ、思いもよらぬ能力を開花・発揮し、そして楽しめる瞬間が訪れたりします。まずは何でも一生懸命やってみる。窮地を乗り切る自信に繋がりますし、世界観を変えてくれたりもします。

海外チームとのポロシャツ交換(左:筆者)。レース後の楽しみのひとつ。同じ舞台で戦ってきたライバルたちと健闘を称え合いました

拙い文章でしたが、いかがでしたか。なにも世界大会などという、そんな大舞台はいらないと思います。苦労しながらも全力で楽しめるオリジナルの世界を見つけること、簡単なようで難しいことですが、人生の考え方を変えるきっかけになります。プレッシャーや不安に押し潰されそうな人、頑張り過ぎて楽しめていない人への参考になればと思います。

ちなみに、先述の飲み会続きの生活で私の体重最高記録を更新したのは、ここだけのお話です。

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