マヨネーズの味はキユーピー100年の歴史の中で劇的に進化した。食を取り巻く環境も激変し、食の安全、少子高齢化、グローバル化など課題も山積。次の100年、キユーピーはどのような変貌を遂げるのか。引き続き、創業家の中島周(なかしまあまね)会長に聞いた。(前回の記事は、「マヨネーズは劇的進化 キユーピー会長語る100年」)
--キユーピーが日本で初めて世に出して以来、マヨネーズはすっかり日本の食文化を代表する調味料になりました。日本の食文化といえば、その基盤となる「家庭の食卓」が危機的状況にあるようです。
確かに、最近の食卓の状況は厳しくなってきたと思います。うちで食卓の研究をしている顧問の先生によると、かなりボロボロだとか。孤食といって、一つ同じ家に住んでいながら、家族が個々に自分の部屋や外で食事をする現象も珍しくないようです。テーブルがない家もざらにあるといいます。いまいましき状況ですね。食品企業で働いている人はまだ食事を大事にしているから平均的な姿とは違うだろうけど、世の中一般のことを思うと……。
昨今家庭内食が減っている中、働く人が増えれば、昼も夜も出来上がったものを食べるようになります。マヨネーズは発売当初、「家族だんらんの中の家庭の食事」というイメージとともにブランドを訴求してきましたが、家庭の味が減ってくれば、我々はそれに合わせざるを得ません。となると、今後は中食や外食の事業者さんといっしょに仕事をしていき、そこにうちのソースを供給していきます。いっしょにメニューや味を作っていくということです。
そうした中では、理想ばかりを追求することもできません。いくら薄味がはやっているからといっても、彼らがチェーンオぺレーションで商品を供給していく上で、薄味ばかりを提供できないこともあります。また、ファミリーレストラン業態のような専門のシェフがいない店舗では短時間でぱっと温めてサービスしますが、うちとしてはその方法にふさわしい味のソリューションを提供しなければなりません。従来の家庭用の商品を作っていたときにはなかった制約が生まれ、そうした仕事の割合が大きくなっているのです。外食チェーン店さんらと一緒に仕事することが増えており、うちは黒子に徹しながらもそうした課題を解決することで、新たなブランド力を発揮していくつもりです。
その一方で、「愛は食卓にある」というコーポレートメッセージは変えずに発信してきました。だんだん食卓がなくなっているのに、いつまでこのスローガンを標ぼうするのかということはよく議論しています。それでもあえて我々は、食卓こそが大事であり、そこに家族や友人が集まって会話をすることに価値があるということを、マーケットが小さくなっても伝えていこうと話しています。精神は伝え続けるということですね。
--マヨネーズをこよなく愛する「マヨラー」も登場しました。
ご飯にでもなんでも、あらゆる食べる物にマヨネーズをかけて食べる若者が出現しましたね。マヨネーズをこれほど愛してくれて、こんなにたくさん使ってくれるとはありがたいことです。ほほえましくもあり、びっくりもしました。「マヨラーの活動を支援してください」という依頼もありました。