ライフコラム

井上芳雄 エンタメ通信

生田絵梨花さんの魅力 ガッツと純真(井上芳雄) 第38回

日経エンタテインメント!

2019/2/2

井上芳雄です。東京芸術劇場プレイハウスで上演していたミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』が1月27日で千秋楽を迎えました。劇場が観客参加型の構造だったり、アコーディオンやピアノの楽器に挑戦したりと、初めての経験が多くて大変でしたが、やりがいのある充実した日々でした。

『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』は1月5~27日まで東京芸術劇場プレイハウスで上演。井上芳雄(右)と生田絵梨花(左)(写真提供/東宝演劇部)

ヒロインの伯爵令嬢ナターシャを演じた生田絵梨花さんと、ミュージカルの舞台で共演したのも初めてです。感じたのは、すごく根性がある人だということ。アイドルグループの乃木坂46をやりながら舞台に立つのは、大変だと思うんです。『グレート・コメット』は年明けの開幕なので、昨年末が稽古の佳境でした。アイドルはふだんから忙しいうえに、年末の音楽番組などもあって休みがない状況で、「どちらも自分で選んだことだから」と言って頑張ってました。

もともとミュージカルをやりたくてこの世界に入ってきたからガッツがあるし、アイドルのタフさを目の当たりにしました。最前線のアイドルで、かつミュージカル女優としてヒロインをやる人はあまりいなかったと思うので、自分で新しい道を開いています。

ミュージカルをやるには、いろんな要素が必要です。歌はもちろん、お芝居もダンスもやらないといけない。役にあっているかどうかという問題もある。生田さんは、その才能をたくさん持っていると感じました。

僕なんかは、舞台俳優は遠目で見てもらって栄えればいいかなと思ったりするのですが、生田さんは遠目でも、近くに寄っても美しい。それも持って生まれた才能です。そういったことが備わったうえで、才能に甘んじることなく、すごく努力をする。そこがすごいところです。

ミュージカル女優としては、これまでも『ロミオ&ジュリエット』でジュリエット、『モーツァルト!』でコンスタンツェ、『レ・ミゼラブル』でコゼットといった、若い今だからできる役を存分に演じています。

役者には、その人がそのときにしかできない役があると思うんです。今回のナターシャでも、役が必要としている輝きを備えていると感じました。天真爛漫(らんまん)で無垢(むく)な女の子がいろいろな経験を経て、少しずつ大人の女性になっていく過程を演じたのですが、生田さん自身とも重なる部分があると思います。立っているだけでナターシャがそこにいる気がしました。

もちろん、若いからこそ難しい表現もたくさんあるでしょう。僕も、そうでした。人生の経験が少ないのだから当然のことで、それをどう培っていくか。彼女には今の自分と向き合える強さと、なんとかして役の芯をつかみたいという純真さがあって、僕はそこに胸を打たれました。ますますこれからが楽しみです。

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