周囲の景観とマッチして、華やかな絶景を演出する。
一足早い春を満喫できる花の名所を、専門家10人が選んだ。
冬に耐えた生命力 春を呼ぶ美しさ
「2月に水仙や梅が咲き始めると、これから様々な花を楽しめるのだと胸が躍る。陽春の花見のシーズンの到来を感じさせる」。日本植物友の会副会長の山田さんは早春の花畑をこう位置づける。水仙は寒中の花。花の少ないこの季節に香り高い簡素な花を咲かせる。冬に耐えて咲くからこその華やかさであり、その生命力が周りの景観と美しさを競い、見る人を感動させるのだという。
専門家の多くは3位の在来種の節分草がもっと知られていいと指摘する。森の雑木林に群生する節分草は「スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral)」といい、日本語で「春植物」と訳す。「春の妖精」ともいわれる。雑木林の下で芽生え花を咲かせ、木々の葉が生い茂る時期には姿を消す。早春のわずかな間にしか見られない。10位以下となったが島根県川本町の春植物「イズモコバイモ群生地」を強く推す声もあった。
ただ、希少な草花だけに、群落の中に入っても細心の注意を払って撮影しよう。きっと素晴らしい出合いになるはずだ。
(神奈川県湯河原町) 680ポイント
艶やかな紅白のじゅうたん
温泉地で知られる湯河原に広がる早春の花畑。ハイキングやフリークライミングで有名な幕山(まくやま)の山麓斜面に、約4000本の紅梅や白梅が咲き誇る。
「山頂から眺める景色は梅のじゅうたん。その先には相模湾や真鶴半島の眺望が楽しめる」(三上美似さん)。斜面にあるので景観は変化に富む。「観光用に様々な園芸品種が集められ、紅やピンクも混じって艶やか。花や木の形も一重や八重、枝垂れ梅などが入り交じって飽きない」(石丸哲也さん)
2日から3月10日までは「梅の宴」というイベントが開かれる。期間中は大人200円の入園料が必要だ。今年で24回目で「売店が並び、梅ソフトクリームや湯河原名物の担々焼きそばなどを販売するので楽しい」(庄子利男さん)。イベント会場から山頂までは遊歩道が整備されているが、歩きやすい靴で訪れよう。
(1)2月中旬~3月上旬(2)「梅の宴」開催中はJR湯河原駅から臨時バスで15分(3)http://www.yugawara.or.jp/(湯河原温泉観光協会)
(千葉県富津市) 440ポイント
青空照らす 菜の花の大斜面
温暖な気候の千葉・房総半島で、早春を彩る菜の花。房総各地に名所はあるが、羊や馬などと触れ合える観光牧場に評価が集まった。園内の「花の大斜面・西」を中心に咲き誇る350万本の菜の花は、牧場の春の風物詩として知られる。「遊歩道から広大な斜面を見上げると視界を遮るものがなく、広い青空と菜の花の黄色の対比はフォトジェニック」(上野彩子さん)
3月以降、気温が上昇するとミツバチが活動を始める。最近は珍しくなったニホンミツバチやマルハナバチにも出合えるかもしれない。「3月下旬になるとソメイヨシノが咲き始め、黄色とピンクの競演を楽しめる」(平野隆久さん)
牧場なのでソフトクリームなどの乳製品が豊富。新鮮な海の幸や自家製ソーセージもある。今年は早くも斜面の一部で咲き始めた。入場料は大人1500円。春休みは混雑するので、開園時間と同時に入場したい。
(1)2月中旬~4月中旬(2)JR君津駅から直行バスで30~40分(3)http://www.motherfarm.co.jp/
(栃木県栃木市) 430ポイント
雪の隙間から 白く可憐な節分草
雪解けとともに白い花を咲かせ、数週間で散るはかなさで知られる節分草。植物園である「四季の森星野」は三峰(みつみね)山のふもとに位置し、節分草が自生する北限の地だ。「希少種の可憐(かれん)な姿がひときわ美しい」(原誠一さん)。「福寿草、ロウバイなど早春を代表する草花も観賞できるのは全国でも珍しい」(大場秀章さん)
群生地は散策道沿いから簡単に撮影でき、じっくり観察できる。「特に雪の降ったあと、その隙間からのぞくように白い花を広げる姿は幻想的」(山田隆彦さん)
節分草の花言葉の一つに「人間嫌い」がある。人目に触れるのが短い様子を表現した。花のつくりも独特で、白い花びらに見えるのは萼片(がくへん)といい、萼片の内側にある黄色い棒状のものが花びらだ。先端から蜜を出す。「花の造形美を味わうのも魅力」(久保田賢次さん)。
(1)2月下旬~3月上旬(2)東北自動車道栃木ICから車で20分(3)https://www.tochigi-kankou.or.jp/(栃木市観光協会)
(神奈川県松田町) 410ポイント
富士山の雪化粧と河津桜
早咲きの河津桜が、標高568メートルの松田山に一足早い春を告げる。約360本の桜が植えられている山の南斜面からは、松田町内を流れる酒匂(さかわ)川、その先に相模湾を見渡せる。「山から西に望む、雪化粧の富士山と桜のコントラストは、一見の価値がある」(大場さん)
9日から3月10日まで「桜まつり」が開かれる。会場では特産のサクラマスを使った弁当が食べられる。山へはシャトルバスで行けるが「花見のあと、歩いて駅まで下りれば古い町並みの景観を楽しめる」(平野さん)。ハーブガーデンもあり、季節のハーブやハーブティーなどが味わえる。
(1)2月上旬~3月上旬(2)JR松田駅からシャトルバスで10分(3)http://letsgo-matsuda.com/?page_id=3254
(茨城県ひたちなか市) 400ポイント
香り迫るスイセンの丘
200ヘクタールに及ぶ広大な公園には、四季を通じて様々な花が咲き誇る。その一角「スイセンの丘」では、2万1000本の早咲きの水仙が丘を彩る。「圧倒的なスケール。斜面が文字通り黄色に染まる光景は、インスタ映え間違いなし。香りも良い」(上野さん)
緩やかにうねる丘陵に、大きなラッパのような形をした花が迫ってくる。この圧巻の風景を見ようとシーズン中は多くの人が訪れる。「観覧車などのアトラクションがあるのもうれしい」(三上さん)。園内では3月中旬になると早咲きの菜の花、下旬には品種の違う水仙が咲く。入園料は大人450円。
(1)3月上旬~中旬(2)JR勝田駅から路線バスで公園西口まで15分(3)http://hitachikaihin.jp/