2019/1/30

ヘルス

肌や髪の「美容不調」も貧血が原因かも

影響が及ぶのは体の中だけではない。細胞が酸欠になると、新陳代謝も正常に行われなくなる。

「肌の細胞の新陳代謝が悪くなると、肌がカサついたり、張りが失われたり、血色が悪くなったりします。また、毛根の細胞の新陳代謝が低下すると、髪が細くなったり、抜け毛や枝毛が増えたりします。爪も薄く、割れやすくなります」(山本さん)

つまり、鉄不足は年齢より老けて見える原因になるというわけ。クリームやトリートメントなどで補っても肌や髪、爪の状態がよくならない人は鉄不足を疑ってみたほうがいい。

「実は私自身、高校生の時に無理なダイエットをして体重が30kgを切ったことがあります。肉、魚、米を極端に減らすという食生活で、エネルギーも鉄も十分に取れていなかったことは明らか。その結果、肌はカサカサで抜け毛がひどく、目の下のクマはいくら寝ても取れませんでした。きれいになりたいと思って励んだダイエットで貧血になり、きれいとは真逆の状態に陥っていたんです」(山本さん)

貧血かどうかの指標の一つが血液検査の「ヘモグロビン濃度(血色素量)」だ。成人女性の場合12mg/dl未満だと貧血とされる。

女性は月経による出血で鉄が失われるため、そもそも貧血になりやすい。それに加えて、ダイエットをするなどで食事の量が足りていない人は鉄の補給量が少なくなる。

「鉄は食事をしていても、かなり意識しないと取れない栄養素の代表。ですから、太りたくないからと食事制限している人や、仕事が忙しくて食事バランスが崩れている人は、まず、鉄不足といっていいでしょう」(山本さん)

鉄の摂取推奨量は成人女性の場合、1日10.5mgだが(※2)、実際に取れているのは20代で6.4mg、30代6.4mg、40代6.8mg。平均3~4mg不足している(※3)。この不足割合は、他の栄養素に比べて特に高い。

(※2)「日本人の食事摂取基準2015年版」より

(※3)「平成29年国民健康・栄養調査」より

健診で貧血を指摘されなくても、安心は禁物

ここまで読んで、「でも、健診で貧血を指摘されなかったから大丈夫」と思った人もいるだろう。しかし、ヘモグロビン濃度が正常値範囲であっても、実は安心は禁物。というのも、多くの女性が「隠れ貧血」の状態だからだ。

私たちの体内の鉄の60~70%はヘモグロビンにくっついて血液中に、残りの30~40%はフェリチンというたんぱく質と結合した状態で肝臓や脾臓(ひぞう)などに蓄えられている。酸素を運搬するために働く鉄を「機能鉄」、体に蓄えられている鉄を「貯蔵鉄」という。

食事で取った鉄は、まず、ヘモグロビンをつくるのに使われ、余った分が貯蔵鉄として蓄えられる。貯蔵鉄は月経や妊娠など、鉄を大量に消費する「非日常」に備えた、備蓄の鉄というわけだ。隠れ貧血は、この貯蔵鉄が足りない状態。そして、20~40代女性の40%以上が隠れ貧血だという(※4)。

「鉄をお金に例えると、ヘモグロビンに含まれる鉄は財布のお金、貯蔵鉄は銀行口座の預金です。財布のお金がなくなったら、預金を下ろして使えるので当面の生活には困りません。でも収入が増えないのにこれまで通りにお金を使っていたら、銀行口座はいずれ空っぽになってしまいます」(山本さん)

貯蔵鉄とヘモグロビンと貧血の関係のイメージ図。赤血球のヘモグロビンに含まれる鉄は財布のお金、貯蔵鉄は銀行口座の預金に例えられる。ヘモグロビンだけでも体は機能するが、貯蔵鉄がないと月経、妊娠、出産などで鉄がたくさん必要になったときにすぐに貧血になってしまう(イラスト/平 拓哉)

酸素の運搬に使われた鉄の大部分は、ヘモグロビンの合成などに再利用されるが、毎日約1mgの鉄が汗や尿、便などから排出される。そのため、毎日の収入(食事からの鉄)が少ないと、財布のお金がすぐになくなってしまい、預金には回らない。貯蔵鉄が貯まらないというわけだ。

そして、貯蔵鉄の枯渇した隠れ貧血の人は、急な「出費」があると「家計」が破綻して貧血に陥ってしまう。急な出費とは、月経や妊娠、出産など。だから、特に月経がある世代にとって、隠れ貧血の改善も急務なのだ。

「体に鉄が十分にあるかどうかを正確に知るには複数の項目を見る必要がありますが、一般には機能鉄はヘモグロビン、貯蔵鉄はフェリチンの値を調べます。でも健診では通常ヘモグロビンしか見ないので、隠れ貧血が見過ごされてしまうのです」(山本さん)。

(※4)「平成21年国民健康・栄養調査」より、血清フェリチン15ng/ml未満の割合

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