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千葉・西船橋でさく裂 「小松菜ハイボール」パワー 探訪!ご当地ブランド(1)

2019/1/25

マンションなどが立ち並ぶ界隈でコマツナを栽培している

1994年には市内のコマツナ農家と組んで「葉物共販組合」を結成し、東京・大田区の東京青果市場への出荷に乗り出す。しかし、埼玉、茨城など近隣県からの大量出荷が始まると値崩れが起き、さらにブランド力を磨く必要があった。2006年以降は「地産地消」「食育」にも注力する一方、生産者全員が「エコファーマー」(減農薬、低化学肥料などに取り組む環境に優しい農家)の認証を取得。船橋ブランドのコマツナの座を見事に確立した。

話をハイボールに戻そう。「小松菜ハイボール」の完成披露は2012年2月。デビューには面白いエピソードがある。

JR西船橋駅近くの居酒屋「フナバシ屋」では連日、夜の作戦会議が開かれた。メンバーは、平野さん、フナバシ屋の店長、そして友人ら。店のメニューには既に「小松菜ハイボール」と記載したものの、味はまだ試行錯誤が続いていた。塩を入れた熱湯でゆでたコマツナの葉をミキサーでかくはんしてピューレ状にする。問題は、いかにヘルシー志向で珍しいもの好きの女性向けのハイボールにするかだ。

「我々は奥で飲みながら、若い女性客にそっとプレゼントする形で試飲してもらいました。いい歳をしたオヤジのナンパと思われたのでは?」と平野さんは笑う。だが、女性たちは「これ、すごい緑色!」「甘すぎるんじゃない」と率直な感想を聞かせてくれた。当初はコマツナベースのリンゴ味としたが、「甘味を抑えたかんきつ系のグレープフルーツ風味がいい」との声が女性客から上がり、路線を変えた。

よし、これで完成だ、と地元の記者クラブにプレスリリースを持ち込むと、記者は忙しそうに机に向かったまま。そこでフナバシ屋を運営する飲食店チェーン、山商(船橋市)の山本圭一専務が突然、「今夜5時からフナバシ屋で試飲会をやります!」と大声を出すと、大半の記者が振り向いた。試飲会には記者が三々五々集まり、あれこれ批評しつつも、続々と記事になった。「お客さんや記者さんらとのコラボの産物が今の小松菜ハイボール。人と街と畑がつながったんです」と平野さん。目下、小松菜ハイボールが飲める店は市内に20軒以上あるそうだ。

西船橋のコマツナが紡ぎ出す物語は、ハイボールだけではない。平野さんの肩書の中で目を引くのが「船橋小松菜パウダー会会長」。ハイボールと並行して、応用範囲が広いパウダーの開発も進んでいた。

平野さんの自宅近くの駐車場。近所にコンビニもない寂しげな一角に毎週水曜と金曜の2回、宅配便のトラックを改造したピザのキッチンカー「クッチーナ セッテ」がやって来る。営業時間は午前10時~午後8時。土日と祝日は、船橋市の観光名所「アンデルセン公園」での営業だ。有名外食店チェーンの店長やマネジャーも務めた宇田川隆さんが、2014年4月から1人でやっている。

十数種類あるピザのメニューのうち、目玉の1つが「小松菜ピザ」。小松菜パウダーを練り込んだ緑色のピザ生地の上にニンニクやベーコン、マッシュルーム、コマツナなどのトッピングを乗せ、特注の窯で1枚3~5分ほどで焼き上げる。「ピザ生地の3%くらいの小松菜パウダーを混ぜて練り上げるとつなぎもよく、きれいなグリーンに染まります」(宇田川さん)。話を聞くうちに、夕食用のピザを買いに来た常連客の行列が出来ていた。

緑色の生地がユニークな売れ筋の「小松菜ピザ」

京成船橋駅から徒歩5分の手作りパン専門店「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」。2003年にパン職人の小宮義和さんが開業したこの店は、ラーメン店のラー油、中華料理店のエビチリなど、パンには珍しい食材を使った創作品が多く、都内からも客が訪れる。とりわけコマツナ系のパンは昼頃には売り切れてしまう。「お子さんに野菜を食べさせたいお客さんが多いですね」(小宮山さん)。

「コマツナロール」、パンに厚切りベーコン、チーズを挟んだ「小松菜ベーコン」、パンとハンバーグ、チーズ、ペースト状のパクチーを合体させた「パクチーバーガー」、中に黒豆とクリームチーズが入った「小松菜黒豆」など、いずれも好奇心をそそられる逸品だった。

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