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絶滅危惧のハワイ固有カタツムリ 最後の1匹が死ぬ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/1/26

■残されしもの

そして2000年代前半、ハワイ大学マノア校の研究室でジョージが生まれた。1997年、オアフ島ポアモホ・トレイルの脇で、数本の木から最後の群れを収集。その中にジョージの両親がいた。

数匹の繁殖に成功したが、子供たちもその両親も長く生きられなかった。2000年代半ばまでに、「1匹の子を除き、Achatinella apexfulvaは全滅しました。それがジョージでした」とシスチョ氏は振り返る。

Achatinella apexfulvaの最後の群れが見つかった場所で立ち止まり、双眼鏡で木を見て調べることが、カタツムリ研究者たちのならわしになった。「きっと見つかるという希望を持ち続けていました」とハドフィールド氏は話す。しかし、新たな個体は見つからなかった。2012年、ジョージは成熟期に達したが、交尾の相手はいない。結局、10年以上にわたって水槽で孤独な生活を送り、2019年の元日、ジョージは他界した。

ジョージの死骸はエタノール保存された。貝殻は200万を超えるハワイの陸貝の標本とともに、バーニス・パウアヒ・ビショップ博物館の軟体動物コレクションに加わる予定だ。

2017年には、ジョージの足の小片が慎重に切り取られ、サンディエゴ動物園保全研究所の「冷凍動物園」に送られた。クローニング用のDNAを提供するためだ。現在のところ、クローニングは不可能だが、近いうちに実現するだろう。この飼育繁殖プログラムで死んだ生物の個体はすべて保存されている。ハドフィールド氏によれば、古い貝殻からDNAを採取できる場合もあるため、種をよみがえらせるための遺伝的多様性を確保できる可能性はあるという。ただし、カタツムリの暮らす森が元の状態に戻り、外来種が排除されない限り、安全な生息環境はもうどこにも存在しない。

■固有種2000匹が暮らす「愛の小屋」

ジョージは最後の2年間、オアフ島にある3.6×13.4メートルのモジュール式トレーラーで暮らした。一部の人に「愛の小屋」と呼ばれていたトレーラーだ。2016年、シスチョ氏とカタツムリ絶滅防止プログラムが正式に飼育繁殖プログラムを引き継ぎ、現在、ハワイ固有のカタツムリを30種飼育している。いずれもすでに野生で絶滅した種か、極めて希少な種のどちらかだ。個体数が50を切っている種もいくつかある。

多様なハワイマイマイ属のカタツムリたち。多くのカタツムリと同様、外来種の捕食者をはじめとする深刻な脅威に直面しており、すでに多くが絶滅している(PHOTOGRAPHS COURTESY DAVID SISCHO, HAWAII DEPARTMENT OF LAND AND NATURAL RESOURCES)

2000匹のカタツムリを世話することは容易ではない。光、温度、湿度が調節された環境制御室を6つ用意し、注意深く設計された水槽で飼育している。ほぼ一日おきに、カタツムリの生息環境である植物の枝を切り、水槽に入れる。葉に自生する藻類や菌類を食べさせるためだ。さらに、固有種の木に自生する菌を培養し、食事に加えている。

研究者たちは、こうした努力がより多くの種を絶滅から救い、ジョージが死んだ後も生前と同じく、人々の問題意識を高めてくれることを願っている。

「陸貝の絶滅危機はあまり注目されてきませんでした」とランデル氏は話す。「これらの種は地球上の生命の重要な一部です。その彼らが絶滅し始めています。私たちを支える環境に異変が起きているということです」

バーニス・パウアヒ・ビショップ博物館で軟体動物コレクションの責任者を務めるノリーン・イェン氏は「皆でジョージの死を悼みながら、ハワイのカタツムリにはまだ希望があるという思いを強くしています」と語った。「どうか彼らのことを忘れないでください」

(文 CHRISTIE WILCOX、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年1月11日付]

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