確定申告の落とし穴 メルカリ利用で思わぬ税金も
知って得するお金のギモン
新年を迎え、新たな目標を思い描いている人も多いでしょう。チャレンジを成功させるには過去の振り返りも大切。税金の世界にも年初に過去を振り返る大事なイベントがあります。去年1年のお金の出入りを振り返る「確定申告」です。
不要な生活用品を売ったもうけなら申告しなくてOK
確定申告とは、個人の1年間の所得と税額を確定させ、過不足なく税金を納めるための手続きです。収入が給与だけの一般的な会社員は、年末調整の書類を提出することで勤務先が手続きを代行してくれるので、確定申告は不要。ただし、昨年のお金の出入り次第では、(1)申告が必要になる人、(2)申告したほうがお得になる人がいます。
(1)確定申告が必要な人
去年1年間で給与以外の副収入があった人は、確定申告が必要な場合があります。給与を含めた所得を合算し、税額を再計算して、正しい額の税金を納めなくてはなりません。
「メルカリ」や「ヤフオク!」でお小遣い稼ぎをした人はどうでしょう。実は、一般的な生活に必要なもの(生活用動産)を売って得た利益に税金はかかりません。古着や読み終えた本、不要になった家電などを売って得た利益については、申告は不要です。ただし、宝石や貴金属を売った場合は要注意。自分が使っていたものでも、30万円を超える高値で売れたときは、確定申告が必要になります。
なお、販売目的で仕入れた品物を売って稼いだ人は、「ヤフオク!」や「メルカリ」を使っていても普通のビジネスになりますから、当然、利益の申告が必要です。株式を売って利益が出た人も注意してください。特定口座(源泉徴収あり)以外での取引では原則、申告が必要です。
これらのケースはいずれも申告を怠ると脱税になるので注意してください。
(2)確定申告したほうがお得な人
勤務先の年末調整では、生命保険料や個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」などの支出を経費として扱い、給与から差し引いて(所得控除)、天引きする税額を計算します。年末調整の書類に記載されない支出については、税額の計算に反映されません。
例えば、年末調整の書類提出後に生命保険に加入した人、生命保険料控除証明書を勤務先に提出できなかった人、昨年10月以降にiDeCoに加入した人などは、その分の支出が所得控除に反映されておらず、本来より多くのお金が税金として天引きされる可能性があります。
ふるさと納税や医療費が対象になることも
また、勤務先が知る術(すべ)がない所得控除もあります。例えば、従業員が去年1年間でいくらふるさと納税をしたかや、いくら医療費を使ったかなどは、年末調整の書類にも記入欄がなく、勤務先は把握できません。ふるさと納税のような一定条件を満たす寄付や、同居家族を含めた一定額以上の医療費支出は、証明書や領収書を添えて申告すると、所得控除の対象になります。
これらのケースは確定申告をしなくても問題はありませんが、申告すると、納めすぎとなっているお金が戻ってきます(*)。
紹介した例のほかにも、年末調整に反映されていない収入や、所得控除の対象となる支出があったと考えられる人は、確定申告の要・不要を確認してください。具体的な確定申告の方法は、国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」に詳しく書いてあります。
なお、今年から「スマート申告」がスタートしました。スマホから簡単に確定申告ができるようになっています。
*:ふるさと納税の場合は、会社員などの給与所得者で、年間の寄付先自治体が5カ所以内なら「ワンストップ特例」の書類を自治体に送付すれば確定申告は不要。
今月の回答者
税理士。大手簿記学校の税理士科専任講師を経て、2006年に望月茂税理士事務所を開設し、代表に。税金のお得情報や、確定申告・相続税のノウハウなどを分かりやすく解説。
[日経ウーマン 2019年2月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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