エンタメ!

井上芳雄 エンタメ通信

松本白鸚さんの言葉 今をあなどるなかれ(井上芳雄) 第36回

日経エンタテインメント!

2019/1/5

井上芳雄です。今年もよろしくお願いします。2018年12月14日に『レジェンド・オブ・ミュージカル in クリエ』の第3回を催しました。ミュージカル界のレジェンドをお迎えして、日本のミュージカル創生期の話を、僕がホストとしてうかがう企画です。今回は松本白鸚さんに来ていただきました。白鸚さんは「役者はなんでもやる必要はないけれど、プロの役者ならなんでもできないといけない」とよくおっしゃっています。僕は、その言葉が好きで、同じような心構えでやらせてもらってきました。当日は、ほかにも心に残る言葉がたくさんありました。

12月14日にシアタークリエで開催された『レジェンド・オブ・ミュージカル in クリエ Vol.3』。左から井上芳雄、松本白鸚(写真提供/東宝演劇部)

白鸚さんは歌舞伎だけではなく、ミュージカル、現代演劇、映画、テレビドラマと、演劇でも映像でも、あらゆることをやられています。ミュージカルは1965年の『王様と私』日本初演で主役を演じて以来、『心を繋ぐ6ペンス』『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ラ・マンチャの男』『スウィーニー・トッド』といった作品に出られ、歌舞伎俳優としての名声を極めながら、日本のミュージカル界をけん引されてきました。

今年10月には『ラ・マンチャの男』の再演が決まっていて、実に半世紀にわたり1200回以上演じられています。1970年には、その『ラ・マンチャの男』で27歳のときに日本人として初めて米国のブロードウェイに招かれて主演を果たしました。また、1990~91年には英国のウェストエンドで『王様と私』に主演されています。

本当にいろんなことを経験されているのですが、きっかけは「すべて縁だった」と言います。ミュージカルを始めたのも勧められたからだし、ブロードウェイやウェストエンドの話も向こうから来たもの。断ることもできたけど、そうはせずに新しい世界に飛び込んでいった。その積み重ねの上に、今の自分があるのだと。

だから「今が一番好き。歌舞伎という伝統の世界にいながら、やっぱり確かなものは今なんです」とおっしゃってました。その言葉からは、今、自分がやるべきことをしっかりやってきたという自信が感じられました。

お話をうかがって思ったのは、自分に課しているハードルがすごく高いということ。「(いろんなことをやってきたのに対して)チャレンジャーと言われるとどうもアマチュアぽく感じられてしっくりこない。チャレンジャーで終わらずにプロフェッショナルになりたい。アルチザン、つまり職人と言われたい。役者は『手に芸をつける』のだ」と言われました。日々、相当厳しく鍛錬されていることが伝わってきます。

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL