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和食は日本文化のメインコンテンツ 菊の井村田吉弘氏菊の井代表取締役 村田吉弘氏(下)

村田さんは今、料理法の根拠や科学的な理由を網羅した「日本料理大全(全6巻)」の出版に取り組んでいる 英語版から作り、4巻まで出版済み 最終的には5か国語で出版する

――赤坂店でシャンパンと日本料理のマリアージュに取り組んでいるのは、文化と文化のフュージョンですか?

1998年にドン・ペリニヨンの醸造最高責任者だったリシャール・ジェフロワと一緒に、モエ・エ・シャンドン社のシャトーに各国のメディアを呼んで「ドン・ペリニヨンと日本料理」というイベントをやったんです。リシャールは、「日本料理の自然観とドン・ペリニヨンが求める自然観は非常に近い。ドン・ペリニヨンの中には山の香りがあって、その奥には海の香りがある」と言うてました。

数年前にはアルローというシャンパン会社と知り合って、菊乃井ブランドのシャンパンを作りました。店名がついたシャンパンはうちだけです。それで毎年、シャンパンと日本料理のマリアージュのイベントをやってます。

日本料理とシャンパンは合うんです。ビールみたいに苦みが際立ってると日本料理と合わせるのは難しい。ビールはハーモニーしない酒で、料理で口の中が脂っこくなったのを洗い流すために飲むから、焼き肉にはよろしいね。

――日本料理を次代に継承し、世界に広めていかなくてはいけませんね。

今は京都府立大学に京都和食研究センターがあり、2019年4月に文学部に和食文化学科を新設予定です。立命館大学には18年に食マネジメント学部ができて、飲食店経営を学べるようになった。ほかにも食を研究する学部学科の申請をしている学校がたくさんあるから、継承システムはできつつあります。

アカデミーの中に「日本料理ラボラトリー」があり、日本料理を科学的視点でとらえる研究をしてます。勘と経験で修業してきた日本料理を科学的に分析して数値に変えて、世界中の人に理解できるものにしようと取り組み、発表会も頻繁に開いてます。アカデミー会員の中で3人が京大の大学院を出て、この春、ドクターになる。彼らは英語で論文書いて、英語で講演するから、世界中の人が日本料理の研究成果を理解できます。

陶芸家が入ってる研究もあります。陶芸のような伝統産業も日本酒も日本料理と一緒に世界に出て行けばええんです。すしブームのときに日本酒業界は失敗した。すしは世界中の食べ物になったのに、日本酒を世界の飲み物にする努力をしなかった。アカデミーは日本酒も一生懸命に世界に広めてます。

今は世界中の日本料理店が繁盛して、日本酒も飲まれてる。日本酒が売れたらコメが必要になり、コメを作れば休耕田が減る。ええことです。とっくりやおちょこを使うから、日本の伝統産業も脚光を浴びるでしょう。日本料理の器はリモージュより絶対に日本の皿のほうがいいです。

以前からアカデミーを中心に進めていた日本料理の検定は、19年の春から段階的に始める予定です。実技とペーパーで試験して、「何点なら日本国内では給料はなんぼ」という基準を出し、働きに見合った給料をもらえる仕組みを作る。誰でも努力すれば正当に報われるようにしたいんです。不均衡は是正せんと、全体のスキルが落ちるからね。外国人も受けられるように英語でもやります。これで日本料理人の希望者が増えて全世界に広がれば、日本の第1次産業の生産物も全世界に広がります。

私は66歳なんで、今後はいかに後進に引き継いで、自分はきれいに身を引くかということを考えています。それをやらんと後進が育たんからね。

村田吉弘
1951年、京都・祇園の料亭「菊乃井」二代目の長男として生まれる。立命館大学在学中、フランス料理修業のために渡仏。大学卒業後、名古屋の料亭で修業し、76年に実家に戻り、「菊乃井木屋町店」開店。斬新な料理で予約の取れない店と呼ばれる。93年菊の井代表取締役に就任。04年日本料理アカデミーを設立し理事長を務め、07年にNPO法人化。13年の和食のユネスコ無形文化遺産登録に尽力。18年黄綬褒章受章し、文化功労者に選出される。

(フリーライター 芦部洋子)


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