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食のリーダー

和食は日本文化のメインコンテンツ 菊の井村田吉弘氏 菊の井代表取締役 村田吉弘氏(下)

2019/1/9

「和食がユネスコ無形文化財に登録されて、世界の日本料理店が倍以上増えた」という村田さん

――和食登録後、世界中に日本料理店、和食店が増えました。

登録前は世界で約5万6000軒、登録後5年間に約12万3000軒となり、倍以上です。今後もっと増えます。「海外には日本料理とは似ても似つかんものを日本料理と言って出す店がある。あんなものあかん」と言わはる人がいますけど、僕は日本料理と名乗ってもらうだけでありがたいと思うてます。

日本料理はやっと苗木になったんで枝も葉もいっぱい出します。この枝はいらん、あかんと言って切ると盆栽になってしまう。日本料理を盆栽にするつもりはない。枝も葉もいっぱい出したらいい。大木になったときに、まだ変な格好をしていたら剪定(せんてい)すればいい。海外の日本料理店にお客さんが入って商売ができてるのは素晴らしいことです。

日本文化を世界に発信するためのメインコンテンツが和食なんです。世界をマーケットにするとき、食は分かりやすいですから。ロンドンの日本料理店では、英国人はスープ代わりに味噌汁飲んで、前菜にすし食べて、ステーキ食べて、デザートを食べて帰る。それで日本料理を食うたことになってる。それでいいんです。

本物すべからく正しからずや。文化は相手の国の文化とフュージョンする。日本ではラーメンは日本料理とは言わないが、海外では日本料理店のメニューに入ってる。海外でラーメンと刺し身を一緒に提供する日本料理店があってもしょうがないんです。

「すし」を見てください。カリフォルニアロール、エビ天ロール、スパイシーツナロールやらいろんなものがある。江戸前のすし屋は「あんなものはすしじゃない」と言ってたが、すしロールが世界中にすしが認められるきっかけになったんです。

僕は海外に行くと必ずその国のすしロールを食べるけど、結構うまい。その国の生活や風土に合うてて支持されてます。すしロールがあったから回転ずしの人気が出て、次は日本で本物のすしを食べたくなり、外国人観光客が日本に来て、国内のすし屋が繁盛しているんです。

――和食の登録によって、ヨーロッパではどんな影響が出ていますか。

今、フランスで星付きのフランス料理店を経営している日本人オーナーシェフが26人ほどいるようですが、フランス人は彼らのレストランに「日本料理を食べに行く」と言います。彼らはフランス料理を作っているんやけど、もともとのフランス料理とはえらい違うて軽妙洒脱(しゃだつ)だから日本料理と言われる。日本人にとって料理を軽くするのは簡単なんです。フランス人は「クリームとバターを使わないでどうやって料理を作るんだ」という考えだから軽くできない。

菊乃井には世界中のシェフが何人も研修に来てますが、頭と勘がいいシェフは、だしや調味料を研究します。日本料理の根本がうま味であることや、うま味が何からできているかを理解して、グルタミン酸とイノシン酸の抽出方法を学ぶんです。

「うま味のレベルを上げれば、オイルのレベルを下げても満足度は一緒」と理解した「世界中のシェフたちは、ソースを軽うするために日本料理を学びたいんです。フランスの三つ星レストランにはコンブ、しょうゆ、みりんは必ずありますよ。

デンマークの三つ星レストラン「NOMA」のルネ・レゼビは、トナカイの後ろ足をボイルして一冬中つるして、カツオ節ならぬ「トナカイ節」を作りました。そして、デンマーク大学の研究者と一緒に、デンマークの海でグルタミン酸を抽出できる海藻を探して、その海藻と削ったトナカイ節からだしをひいてます。

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