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装甲車の胴体にハンマーの尾 新種の恐竜ズール公開

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/1/12

ナショナルジオグラフィック日本版

ズール・クルリバスタトル(Zuul crurivastator)の頭骨には、骨の突起がついている。今まで見つかっている鎧竜の化石の中でも、ここまで完全なものは珍しい(PHOTOGRAPH MARK THIESSEN)

カナダのロイヤル・オンタリオ博物館で「生きた戦車」のような新種の恐竜、ズール・クルリバスタトル(Zuul crurivastator)の化石の一部が公開された。体長はおよそ6メートル。尾の先端にはハンマーのようなこぶがついており、ティラノサウルスの骨すら砕く強力な武器となる。鎧竜のアンキロサウルス類に属し、北米で見つかったこのグループの恐竜では、もっとも保存状態が良い。

ズールの発見が発表されたのは2017年5月だったが、18年12月15日に公開されたのは頭骨と尾骨だけ。化石の残りの部分は、今も砂岩からきれいに削り出す作業(クリーニング)が続けられている。

化石が公開される数日前、博物館から東へ160キロほどの展示模型製作会社、リサーチ・キャスティング・インターナショナル(RCI)社の施設を訪れた。社長のピーター・メイ氏が、ポリエステル樹脂の酸っぱいにおいが鼻をつく作業場を案内してくれた。

茶色いテントの中に、コンクリートが敷き詰められたような岩塊があり、4人の技術者が覆いかぶさるように作業していた。先がとがった小型の削岩機を使い、ミリ単位で岩を削り取っては、茶色っぽい鉱物を露出させていく。驚いたことに、皮のようになめらかに見えるその石は、装甲の一部だった。

化石をクリーニングするアメリア・マディル氏。ズールの背中の装甲から、岩片を慎重にはがしていく。マディル氏が率いる5人の技術者が、1年がかりのクリーニング作業にあたっている(PHOTOGRAPH MARK THIESSEN)

化石のクリーニングは、非常に手のかかる作業だ。しかし、手間をかけるだけの価値は十分ある。アンキロサウルス類の化石は珍しく、たとえ見つかったとしても、腐敗の過程でバラバラになっていることが多い。しかし、このズールは、まるで全身が一瞬で化石化したかのようだった。

「最高クラスの標本です」と、カナダのロイヤルBC博物館の学芸員で、アンキロサウルス類に詳しい古生物学者のビクトリア・アーバー氏は語る。このズールの脇腹の装甲が破損していたことがすでにわかっており、ほかの鎧竜と争ったときについた可能性もある。

ロイヤル・オンタリオ博物館の古生物学者でズールを研究しているデビッド・エバンス氏も、「装甲や皮の保存状態は、私たちの想像をはるかに超えて良いものです」と述べている。

■運命のいたずら

アーバー氏とエバンス氏が初めてズールについて発表すると、そのニュースは世界的に報道された。だが運命のいたずらか、数日後、同じカナダにあるロイヤル・ティレル博物館が、のちにボレアロペルタ・マークミッチェリ(Borealopelta markmitchelli)と名付けられる奇跡的に保存状態の良い鎧竜について発表した。

ただし、ボレアロペルタとズールはまったく別の種類の恐竜だ。ボレアロペルタはズールよりも3500万年以上前に生きていた恐竜で、同じ鎧竜でもノドサウルス類に属すると考えられており、尾にハンマー状の武器はついていない。また、ボレアロペルタはズールより数年早く見つかっていたことから、2017年にボレアロペルタの全体像が公開されたとき、ズール化石のクリーニング作業は始まったばかりだった。

今回のズールが死んだのは、7600万年前、現在の米国モンタナ州北部にあたる河口付近だった。あたりには、シダや広葉樹が茂り、水の中にはワニやカメが潜んでいた。浅瀬に沈んだズールの死骸は、膨らんで仰向けになった状態で流木に引っかかり、渦に巻きこまれた。そして、体の大半が短時間で砂に埋もれ、化石として保存されたのだろう。しかし、全身が残されたわけではなかったようだ。ほかの動物に食べられたのか、手足はまだ見つかっていない。

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