――32歳で世界銀行への出向も経験しました。多国籍の人材が働く商社のトップになって、どう役立っていると思いますか。

「融資を求める各国政府や国営企業との交渉を手掛けました。発展途上国のインフラ整備などに民間企業が投資しやすくする仕組みづくりにも取り組みました。上司の課長は米国人の女性でした。当時、三井物産で女性に仕えた経験がある社員は少なかったのではないでしょうか。課長代理はインド人、同僚はフランス人と、まさに多国籍軍でした。インド人女性は産休を取った後に1カ月で復帰するなど、仕事を仕上げる気概がありました。やる気がある人には働きやすい環境で、ダイバーシティーを考えるうえで貴重な経験でした」

日本人だけで経営を回せる時代じゃない

世界銀行では様々な国籍の人とともに働いた(中央が安永氏)

――社長としてダイバーシティーを尊重する経営にどう取り組んでいますか。

「まずは徹底的に相互理解を進めることです。誰でも活躍できるように場所や時間に縛られない働き方が大事になります。社員一人ひとりが都合の良い時間に働けるように、17年には出勤時間を3時間の幅の中から選べる制度を始めました。また、女性のキャリア形成と働き続けるための環境整備を推進しています。17年には育児休業から早期に復職した社員を対象に保育費用の一部補助を始めました。こうした取り組みの成果が出て、女性管理職を20年までに14年比で3倍にするという目標は、18年7月に221人となり前倒しで達成しました」

「また、評価やキャリアパスの考え方をはっきりさせることも重要です。外国人には『頑張れば次がある』といった日本的な考え方は通じません。客観性のある評価と、それに基づく処遇を示さなければいけません。一定の役職以上の日本人が外国人のメンター(助言者)となり、働き方について助言したり、相談に乗ったりする制度も始めています」

――次世代のリーダー育成についてはどう考えていますか。

「日本人だけで経営を回す時代はとっくに終わっています。三井物産は事業を生んで育てる会社です。そのリーダーは本社の人間に限らず、関係会社の人間でもいいし、外国人でもいい。多様な個の集まりが三井物産ですから、大きな人材のプールをつくっていくことが大切であり、そこに外国人材をしっかりと組み込んでいきます」

「そのためには成果主義をもっと取り入れていくことが必要でしょう。新しい事業を作り出したり、既存事業を立て直したり、成長を加速させたり。そうした実績を上げた人材を年齢にかかわらず評価し、きちんと処遇する必要があると感じています」

「日本は若年層がだんだん減り、日本人同士の競争環境は以前より緩くなります。日本人社員には外国人と同じ土俵で競争してほしい。そういう環境をつくることで、人は磨かれると思っています」

安永竜夫
 1983年東大工卒、三井物産入社。プラント関連が長く、米国やインドネシア、中東などで豊富な海外経験を持つ。経営企画部長や機械・輸送システム本部長を経て2015年から現職。

(村松洋兵)

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