残業3割減、削った経費は給料で還元 三菱地所子会社三菱地所プロパティマネジメント 川端良三社長(上)

社員への還元策として6月から「固定残業代」の制度を導入した

減らした残業代の使途に納得感を

川端 おっしゃる通りで、業務改善を積極的に行うことが、自分たちの収入を減らすことにつながるのであれば、それは大きな抵抗要因になります。つまり、削減した残業代の使途に納得感がなければ改革は進みません。他社の事例を調べますと、「研修費など人材育成への投資に使います」という回答が多いようですが、それだけでは社員を本気で巻き込むことはできないと思いました。そこで、ダイレクトに給料として還元する方式を取ることにしたのです。

白河 それは社員の皆さんにとって、分かりやすく、モチベーションが続きやすいですね。還元する金額というのは実際にはいくらくらいになったのでしょう?

川端 改革を始める前の15年をベースにすると、17年度に削減された残業代は1億8000万円ほどです。それを原資に18年度の還元を実行しています。

白河 そんなに……! 想像以上の金額ですが、具体的にどのように還元しているのですか?

川端 一番大きい施策としては、18年度の施策として6月から「固定残業代」を導入しました。職種に応じた基準支給時間を定め、一定の残業代を支払うというもの。もちろん、固定残業時間以上となった場合は、超過分も支給しています。加えて、17年度から引き続き、評価に応じて還元できる仕組みとして、年に2回の賞与に特別加算する仕組みも実施しています。

白河 そうすると、痛みを感じる人がいないので全員賛同しやすくなりますよね。

川端 やはり新しい施策を始めるときには、社員のモチベーションと相乗効果が生まれる仕組みにしなければいけません。まだ試行錯誤段階ではありますが、一定の水準までは持ってこられたかなと思います。

白河 昔は「残業削減はコストカットのため」というイメージが強かったので、いまだに抵抗は大きいと聞きます。その点を解消されようとしているのは大きな意義がありますね。実際、社内からの抵抗感はあまり感じられませんでしたか?

川端 誤解を恐れずに言えば「しなくてもいい残業」をしていた人にとってはプラスしかなく、受け入れやすかったと思います。逆に、「時間をかけてもっと成果を上げたい」という熱心な社員のモチベーションをそがないようにという調整のほうが課題として残っていますね。

先ほど申し上げた固定残業代支給や成果に応じた加算に加え、どんな方法が最適か、検証しているところです。

白河 なるほど。誰も損を感じないような仕組みを目指されているのですね。ちなみに「月20時間分の残業代を必ず払います」としたときに、「だったら20時間分、残らなきゃ」というかえって長居する人は出ていませんか? 日本人は真面目ですし、「長く働くほうがエラい」という固定観念に縛られやすいのでは? と思ったのですが。

川端 今のところは見られないようですね。

白河 最初に「チームで20時間以内に減らそう!」というアクションを起こしてからという順序が効いているのかもしれませんね。「効率よく働くことはいいことだ」という共通認識がすでにあるから、早く帰ることに罪悪感を感じにくいのでは。

川端 たしかにそれはあるかもしれません。

(以下、来週公開の(下)に続く。次回はプロジェクト実施で社員の意識や行動に生じた変化、現場発のアイデアで生まれた新規ビジネス、今後の課題などをお聞きします)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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