研究者も不思議 タコはなぜハリセンボンを襲った?

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/1/11
ナショナルジオグラフィック日本版

日本人にはフグが毒をもつことは常識だ。その仲間のハリセンボンの中にも卵巣に毒をもつものがいる。この映像はそのハリセンボンをワモンダコが襲う様子を撮影したもの。タコが毒を恐れずハリセンボンを襲ったのは、どうしてなのだろうか?

動物界の中で、タコは洗練された捕食者と言われる。一方、フグについては、そうした評価をきかない。ところが、最近撮影されたタコとフグの動画を見ると、タコとフグは互角に渡り合う相手のように思えてくる。

2018年11月初旬、セーシェル、フレガット島沖のサンゴ礁でダイビングをしていたクリス・テイラー氏とキャリー・ミラー氏は、ワモンダコとフグの仲間であるハリセンボンを見つけた。両者は必死に戦いながらも、膠着状態に陥っているようだった。その様子をとらえたのが、上の動画だ。

タコはフグをがっしりとつかみ、サンゴ礁の割れ目に引きずり込もうとしている。二人が見ている前で、タコは数分間、相手を自分がいる穴に引き込もうとがんばっていたが、フグは膨らんで抵抗し、まったく動く様子を見せない。

タコは、フグが岩の隙間よりもずっと大きいことに気付いたのか、やり方を変えた。サンゴの下からフグのもとに出てくると、今度は力強い腕を広げて膨らんだ魚をトゲごと包み込む。2匹はその状態で15分近く格闘したが、どちらも降参する様子は見せなかった。

この戦いの結果を、テイラー氏とミラー氏は知らない。というのも、勝者が決まる前に、浮上しなければならなかったからだ。そこで、ナショジオは、科学者にタコとフグの戦いの結果を予想してもらうことにした。

まずは、昼行性であることから「昼のタコ」とも呼ばれるワモンダコについて、米マサチューセッツ州ウッズホール海洋生物学研究所の研究主幹、ロジャー・ハンロン氏に聞いた。

「ワモンダコは自分自身と同じ大きさの相手を捕食することができます。腕とその間の膜を伸ばすことで、口を非常に大きく開くことができるのです」とハンロン氏はタコの戦略を説明する。

ワモンダコは、カニ、イガイ、無脊椎動物などを食べるが、ときおりサンゴ礁にひそむ魚や頭足類も獲物にすることがあるという。

ハンロン氏は、動画のタコはおそらくハリセンボンを食べることができただろうと考えているが、ハリセンボンがなぜ狙われたのか、その理由に関してはわからないという。「タコが進んで、毒のありそうな魚を選ぶなんて、その理由については私も興味がありますね」

フグの仲間の多くは内臓にテトロドトキシンという神経毒を持つことで知られている。テトロドトキシンはシアン化物の1200倍以上の毒性がある。1匹のフグには、成人30人を殺害できるほどのテトロドトキシンが含まれ、解毒剤はない。非常に危険な毒なのだ。ちなみにハリセンボンも、種類や地域によって卵巣に毒をもつものがいるという。

テトロドトキシンは人間には有害だが、タコにどう影響するかはわかっていない。ハンロン氏は、このタコは毒に免疫があるか、そもそもフグの仲間が毒を持つ危険性を知らないのではないかと語る。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年11月28日付記事を再構成]

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