週末レシピ 年越しおかめそば、おせちの材料で簡単に
2018年もいよいよ残りわずかとなった。日本の年末年始には、新年に向けて幸せを呼び込むためのさまざまな行事食がある。正月のおせち料理や雑煮、大みそかの年越しそばなどを恒例行事にしている人も多いだろう。
今回は、おせち料理や雑煮用の食材を使いまわして、年越しに「おかめそば」を作ってみようという提案だ。おかめそばとは、かまぼこや青菜、甘く煮つけたしいたけなどを、女性の顔に模して盛り付けたそばのこと。年越しだけではなく、おせちが余ったときにも使えるアイデアだ。さっそく作り方を紹介しよう。
<材料:2人分>
そば 200グラム(乾麺の場合、好みで生麺でも) / 麺つゆ 適量 / かまぼこ 1本 / だて巻き 1本 / ホウレンソウ 1把 / 筑前煮などの煮物(市販のもの) 適量
(1)ホウレンソウはきれいに洗い、たっぷりのお湯でゆでた後、水を入れたボウルに入れてアクを抜く。その後、軽く絞って食べやすい大きさに切る
(2)そばをゆでるための鍋にたっぷりの水を入れて火にかける。それとは別にそばつゆ用にやかんでもお湯をわかしておく
(3)かまぼことだて巻きは8~10ミリくらいの厚さにそれぞれ4切れほどスライスする。残りはおせち料理として使う
(4)鍋のお湯が沸騰したら、そばを入れる。袋に書いてある分数よりも少し短めにゆでる
(5)そばがゆであがる直前に、器に麺つゆをボトルの表示通りの分量を入れ、表示通りのお湯の量で希釈する
(6)そばをしっかり湯切りし、器の中に入れる
(7)そばの上に用意しておいた具を乗せる。煮物の中にタケノコがあれば、それを鼻に見立てて中心に、かまぼこを目、だて巻きをほほ、ホウレンソウを髪の毛、シイタケを口に見立ててそれぞれ置いて、できあがり
以上である。つまり、かけそばを作り具を乗せるだけ。ホウレンソウは我が家では雑煮に入れるので、大みそかにはすでにゆでて準備してある。地域や家庭によって雑煮に入れる青菜は異なるので、コマツナなどその家庭で使う青菜を入れればよいし、冷凍食品のホウレンソウを使えばゆでる手間も省けるだろう。
のせる具は上記に紹介した限りではなく、タケノコの煮物がなければエビの天ぷらを鼻の代わりにするなどもアリ。ただ、できればかまぼこと卵と青菜は彩りも美しくなるので、是非入れていただきたい。卵はだて巻きではなく、だし巻き卵にするのでもよい。
さて、「年越しそば」の習慣は江戸時代にはすでに定着していたようである。うどんに比べると「切れやすい」ことから「今年の災厄を断ち切る」という意味で大みそかに食べるようになったとも、細く長いそばを食べることで長寿を祈ったとも言われている。
次に「おかめそば」についてであるが、江戸時代後期に江戸・下谷七軒町(現在の地下鉄千代田線根津駅近辺)にあった「太田庵」というそば店が発祥という。リボンのように結んだ湯葉、マツタケのスライス、かまぼこ、ミツバなどが入っていたそうである。具の並べ方が「おかめ」、すなわち丸顔で鼻が低くほお高な女性の面に似ていることからその名がついたとのこと。
現代では食材を使ってアニメのキャラクターや動物を表現した「キャラ飯(めし)」をSNS(交流サイト)などでよく見かける。言ってみれば、おかめそばはその「元祖」といえるだろうか。
太田庵のあたりは当時遊郭があってにぎわいを見せており、「元祖キャラ飯」は人気メニューになり、江戸中に広がっていった。マツタケのシーズン以外にはシイタケが使われるなど、その店ごとに具も自由にバラエティー豊かになっていったようである。
私はおかめそばが好きだが、実は食べる機会はかなり少ない。
「死ぬ前に一度、つゆをたっぷりつけてそば食べたかった」という有名な落語の枕のオチがあるように、通はもりそばの先端にちょっとだけつゆをつけて食べるというイメージがある。確かに、そばの香りやのどごしを楽しむなら、もっともシンプルなもりそばがわかりやすい。初めて行くお店なら、もりそばを注文すればその店の実力がよくわかるという。
だから、そば通・グルメの友人に「ここは最高においしいんだよ!」とそば店に連れていってもらった場合は、「もりそば」以外頼んではいけない圧力があって、ついそれに負けてしまう。温かいそば、「種物」と呼ばれる具入りのそばを頼みたくても、「邪道なヤツって思われないかしらん」という、オノレの煩悩がそれを邪魔するのだ。
いや、そもそも最近の「本格手打ちそば」の店ではメニューにないことが多い。うどんも一緒に扱っているような「町の普通のおそば屋さん」でないと食べられない。おかめはもはや「絶滅危惧そば」となっているとさえ感じる。
そんなわけで、私はおかめそばが食べたいときには自分で作って食べている。が、用意する具材も多いし、だし巻き卵を焼いたり、ホウレンソウをゆでたり、シイタケを煮たりと、けっこう手間がかかる。しかし、年末年始ならおせち料理の材料がそのままおかめそばの具になると気がついたという次第だ。
「通だと思われたい!」という私のつまらぬ煩悩を除夜の鐘で昇華させながら、今度の年越しは思い切りおかめそばを堪能する予定である。
(ライター 柏木珠希)
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