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旅・風景

名作映画の舞台 モロッコ・カサブランカの本当の姿

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/1/6

ナショナルジオグラフィック日本版

断食明けを祝う祝日イード・アル・フィトル。車の列は男女を分けるためだ(PHOTOGRAPH BY YASSINE “YORIYAS” ALAOUI ISMAILI)

北アフリカに位置するモロッコ。その最大の都市がカサブランカだ。映画で有名なモロッコの港町は、果たしてロマンチックな町なのだろうか。現地在住の写真家ヤシン・アラウィ・イスマイリ氏が人々の生活を切り撮った。

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「リックス・カフェ」を訪れると、天井まで伸びたヤシの木や、アーチ下の小さなグランドピアノが迎えてくれ、金線細工のランタンが食事をしているカップルを照らす。この店が有名なのは、もちろんハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンによる1942年の映画「カサブランカ」のためだ。

実は、映画「カサブランカ」はモロッコで撮られたシーンは一つもなく、遠く離れた米国で撮影された。リックス・カフェのセットも、ハリウッドのスタジオにあったのだ。つまり、モロッコのリックス・カフェが映画のレプリカなのだ。地元の写真家、ヤシン・アラウィ・イスマイリ氏が故郷であるカサブランカの日常を記録したいと思ったのは、外国からはカサブランカが今なお映画のイメージで見られていると感じているからだ。

イスマイリ氏(以下では通称の「ヨリヤス」)は、「この撮影プロジェクトは、『カサブランカは映画のような場所なのか』と問う人々に対する答えです」と話す。「観光客はリックス・カフェに行きたがりますが、地元には映画のことすら知らない人もたくさんいます」

「この町の特徴は奇妙さです」と写真家のヨリヤス氏は話す(PHOTOGRAPH BY YASSINE “YORIYAS” ALAOUI ISMAILI)

ヨリヤス氏は、数学を学んだのち、ブレイクダンサーとして30カ国以上を巡り、競技会に参加したり、アラブでこのダンスを広めようとしたりした。写真を撮り始めたのは、見知らぬ土地を記録し共有する道具としてだったが、やがて写真自体に興味が移った。

「数学は、どの道を行けばいいのか、どのアングルが最適なのかを計算する際に役立ちます。私は体がやわらかく、体を使う写真家なので、ダンスも役立ちます。すばやく動いたり、飛び上がったり、体のやわらかさを利用して床から写真を撮ったりします。カメラのファインダーがステージ、私にとって路上の人々はダンサーのようなものです」

言わば「演出家」であるヨリヤス氏が写し撮るのは、郊外から曲がりくねった古い路地まで、カサブランカの人々のさまざまな日常だ。

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