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大泉洋、難病患者の役に挑む 演じることに使命感

日経エンタテインメント!

2019/1/4

年1~2本のペースで映画主演を続ける40代俳優のトップランナー・大泉洋。2018年12月28日から公開されている映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』では、筋肉が衰えて動けなくなる難病と闘う主人公の役に挑んでいる。

1973年4月3日生まれ、北海道出身。96年にTEAM NACS結成。以降、映画、ドラマ、舞台、バラエティなどで活躍。主な映画に『探偵はBARにいる』シリーズ、『駆込み女と駆出し男』『アイアムアヒーロー』など。1月25日には主演映画『そらのレストラン』が公開(写真:中川真理子)

『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は、第35回大宅壮一ノンフィクション賞と第25回講談社ノンフィクション賞をW受賞した『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(渡辺一史・著)を、『ブタがいた教室』(08年)の前田哲監督が映画化。大泉洋は、「筋ジストロフィー」を患い、02年に42歳で他界した鹿野靖明さんを演じている。

「まずは『こんな夜更けにバナナかよ』って、このタイトル一発に力がありましたよね。『何なんだろう、面白そう!』と思いました。そして話を聞くと、鹿野さんという人は、筋ジスで首と手しか動かないのに病院を飛び出して、たくさんのボランティアを集めて札幌で自立生活をしていた、と。しかもボランティアの方々に様々なワガママを言っていたという(笑)。『なぜそんなことができたんだろう。知りたい!』っていうのが、オファーを受けた時の感想でした。

撮影前に原作を読んで、筋ジスや治療法を学んだり、鹿野さんのお母さんや実際にボランティアをしていた人たちに話を聞いたりしました。鹿野さんと同じように人工呼吸器を付けた障害者の方たちにも会ったんですけど、彼らが望んでいたのは、『普通の人と同じように生活したい』ということ。

例えば、みんな彼らに話しかけていいか分からないから、最初に介護の人に話しかけるんですって。『こういうこと、言ってもいいですか?』って。だけどそうじゃなくて、『自分に言ってほしい』と。鹿野さんは、そういう思いに、正直に生きた人というか。障害のある人が普通に生きていくために、あえてワガママを言ったり、迷惑をかけたりしながら生きていたんじゃないかと思いました。

面白かったのは、人によって、鹿野さんの印象が違うことです。呼吸器を付けたある方が、『この人にはこれが頼める、この人には頼めないって、僕らは細かく人を見て頼むんです』と言ってたんですけど、鹿野さんも人によって態度を変えていたみたいなんですよ。だから『鹿野さんはこういう人だ』と言う人もいれば、『いや、そんなのは鹿野じゃない』って人もいる(笑)。なので、僕たちは僕たちで鹿野さん像を作っていくしかない。

その時に、実話を伝えながらも映画として面白いものにするっていう、折り合いが難しくて。前田監督と4時間くらい電話で話しながら、セリフやシーンを加えたり削ったりしたこともありました」

■顔認証できないほど別人に

撮影は、北海道で約1カ月。大泉は外見も本人に近づけようと、約10キロの減量を行い、コンタクトの上にメガネを掛けるなど、細かい役作りをして挑んでいる。

「実際のところ鹿野さんは視力が弱かったから、メガネは度のきついものをしていて、僕も同じくらいの度のメガネにしたかったんだけども、そうすると相手が見えなくて、お芝居にならないわけですよ。僕は、目がいいから。だからまず視力を落とすためのコンタクトを付けて、その上でメガネを掛けて見えるようにしました。

困ったのは、メガネで視界が歪んで酔ってしまうこと。あと、ケータイが顔認証しなくなったんですよ(笑)。しかたなくパスコード入れたら、今度は学習するんですよ。『あ、これも大泉さんでいいんですね! 分かりました~』って(笑)」

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