企業・仕事の相性を どう見たらよいのか?
生涯キャリアの選択肢(8)
前回の記事で、学生と企業の「相性」がよければ、「入社した後もハッピー」。そのチェックに一番間違いがないのが、説明会での社員やOB・OG訪問時に「この人たちとなら一緒に仲間として働ける」と思えるかと述べた。ある学生から、「それ以外の相性のチェック方法はないのか」と聞かれた。ここで、2つ紹介しよう。
安定か挑戦か
大学受験を思い出そう。同じ日に、入りたいけど難易度の高い大学と、受かりそうだけど志望度は低い大学の入試がある。あなたはどっちを選ぶだろうか。正解を数式で書けば、志望度数(X%)×合格度(Y%)の積で、その大きいほうが効用が高い。しかし、そこまでやる人は少なく、またやっても自分の気持ちで決めてしまうことが多い。
人生の出来事は、安定と挑戦のどちらをとるかの連続だ。客観的にどちらがいいかはいえない。その人がどちらを重視するかで答えは変わってくる。就職も同じで、自分の安定・挑戦指数の好みによって選択するしかない。ここで示したのは、それを図にしたものだ。左は安定度が高く、右が低い。公務員は安定しているが、新規のチャレンジの機会は法規制もあり、限られる。小規模のベンチャーなら規制や役職の上下も少なく、挑戦しやすい。でも来年つぶれてしまうかもしれない。要は、自分がこの図のどこがいいと思うか、納得できるかを定めることが業界との相性を考えるベースになる。
世の中には3つの仕事がある
もうひとつは、仕事との相性だ。世の中に3つの主要な仕事があると考える。
・BtoB法人営業 企業同士のつきあい
・BtoCマーケティング ヒット商品の開発、販売、広告宣伝
・管理部門 経理、人事、総務、購買、経営企画等
と分けられる。
法人営業は、相手の企業担当者といい関係を作り、自社商品を説明する論理的思考力、交渉力、人間力が重要だ。しかし、マーケターは違う。自分の中にこだわりがあり、常識人と違った発想ができ、アイデア力、事業組み立て力が必要だ。管理部門は、専門力が必須で、責任感、堅実性が必要だ。
あなたはどのタイプか。それによって、選ぶ会社も変わってくる。BtoBの企業では、マーケタータイプは出番がないかもしれない。よく、「管理部門はどこでも一緒でどう会社を選ぶのか」と聞かれる。それは、その会社へ愛着を持てるかどうかだ。この会社の、この商品の仕事をやってみたいと思えれば、仕事への意識が変わってくる。
この2つの区分を参考にあなたの相性を考えてほしい。
一橋大学社会学部卒業後、東京ガス入社。ロンドン大学大学院留学、ハーバード大学大学院修士課程修了。中東経済研究所研究員。アーバンクラブ設立、取締役。法政大学大学院博士後期課程修了、経営学博士。東京女学館大学国際教養学部教授(キャリア開発委員長)、一橋大学特任教授などを経て2015年より三菱商事社外取締役。18年から立命館大学共通教育推進機構教授。人材育成、企業経営、キャリアデザインを中心に研究し、実践的人材開発の理論を構築。研修・講演は通算1000回を超える。ビジネスリーダーの生涯キャリア研究がライフテーマ。著書は計61冊。就活関係では「受かる!西山式内定バイブル」(小学館)がある。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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