企業情報の探し方(下) 離職率、残業時間を入手するには?
就活リポート2019(3)
前回は初任給の見方について説明しました。今回は入手したくても入手できなかった情報の「年収等」の関連情報として、初任給の見方をお伝えしました。今回は離職率と残業時間の入手方法について説明します。
離職率、残業時間は請求できる!?
離職者数や離職率、残業時間については、国が企業に対して積極的に公開するように指導しています。そして、前回紹介した「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)では、就活生からの要請があれば、青少年雇用情報にある下記の3項目のうち、それぞれ1つ以上を提供しなければならない」となっているのです。もちろん、請求がなくても積極的な情報公開を求めています。
(ア)募集・採用に関する状況
・過去3年間の新卒採用者数・離職者数
・過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
・平均勤続年数
(イ)職業能力の開発・向上に関する状況
・研修の有無及び内容
・自己啓発支援の有無及び内容
・メンター制度の有無
・キャリアコンサルティング制度の有無及び内容
・社内検定等の制度の有無及び内容
(ウ)企業における雇用管理に関する状況
・前年度の月平均所定外労働時間の実績
・前年度の有給休暇の平均取得日数
・前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)
・役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合
就職情報サイトも企業に対して情報公開を求めていますが、各就活サイトの企業・採用情報を見てみると、サイトによって掲載情報にバラツキがあります。「(イ)自己啓発支援の有無及び内容」については、企業も隠したい情報ではないので積極的に公表していますが、「(ア)募集・採用に関する状況」と「(ウ)企業における雇用管理に関する状況」に関しては全く違う状況になります。
(ア)の「過去3年間の新卒採用者数」、(ウ)「前年度の育児休業取得対象者数・取得者数」を掲載している企業はどのサイトも掲載している企業はありますが、「離職者数」「月平均所定外労働時間(残業時間)」となると全く違います。リクナビは両方の情報とも企業に掲載を要請している姿勢が見られますが(掲載企業すべてが掲載しているわけではありません)、マイナビ、キャリタス就活に関してはほとんど掲載していませんでした(2018年版のサイト)。来年3月にオープンする際には情報が掲載されていることを期待したいですね。
就活サイトに掲載がない場合にはどうすればいいのか? 実は、国は学生から情報の問い合わせがあった場合には、回答するように促しています。以下は、厚生労働省が学生向けに作っているリーフレット「就労実態等に関する職場情報を企業に求めることができます!(学生向け)」には、以下のような記述があります。正しい手順を踏めば必要な情報を請求できるのです。
ただ、1つ心配になることがあります。国は企業に対して以下のようなことを注意しています。
国が企業に対してこんなことを注意しているのを見ると、学生としては「情報提供を求めたらマイナス評価をされるかも?」と勘ぐってしまいますね。不安があるときには大学のキャリアセンターや対象企業への就職を希望しない友人に請求してもらうのがいいでしょう。
さあ、これで欲しい情報が手に入る! と思いきや、そうでもないのです。若者雇用促進法には抜け穴があるのです。「就活生からの要請があれば、青少年雇用情報にある下記の3項目のうち、それぞれ1つ以上を提供しなければならない」とあります。
学生が「(ア)募集・採用に関する状況」にある「・過去3年間の新卒採用者数・離職者数」を求めても、企業側は(ア)の3つから1つを出せばいいのです。さらには、情報を提供しなくても、ハローワークでの求人票の不受理という罰則程度で、ハローワークでの求人をしていなければ、痛くもかゆくもないのです。
では、上記にある若者雇用情報については就活生からの請求がなくても積極的に開示するよう企業に指導しており、さらに開示している4373社の企業情報をWEBサイト「若者雇用促進総合サイト」に掲載しています。ただし、同サイトは中堅・中小企業が中心なので、大手企業については「女性の活躍推進企業データベース」があります。こちらは上場している大手企業を含む8355社の情報を公開しています。
「若者雇用促進総合サイト」が公開している情報は、上記の「青少年雇用情報」を掲載し、「女性の活躍推進企業データベース」は、以下の情報を掲載してます。ただ、両サイトとともに、一覧画面はエクセルをそのまま掲載したような画面なので、使い勝手が悪いのが難点です。それでも、就活サイトには載っていないような情報があるので、ぜひご覧ください。
日経HRコンテンツ事業部長、桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科非常勤講師。91年入社。高齢者向け雑誌編集、日本経済新聞社産業部記者を経て98年より就職関連情報誌・書籍の編集に携わり、2005年日経就職ナビ編集長、2015年日経カレッジカフェ副編集長、2018年から現職。著書は『これまでの面接vsコンピテンシー面接』『マンガで完全再現! 面接の完璧対策』『面接の質問「でた順」50』など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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