思わぬ業種にチャンス 仕事のワクワク取り戻す転職エグゼクティブ層中心の転職エージェント 森本千賀子

そこで、Fさんの根本にある価値観を探ろうと、学生時代や子どもの頃までさかのぼって、印象に残っている出来事をお聞きしてみました。すると、Fさんの表情が一気に明るくなったのが、「高校時代の体育祭」の思い出話をしたときでした。

「応援合戦は燃えましたね。クラスの団旗を手作りしたり、振り付けやフォーメーションを考えたり、テーマソングを選んだり。あれは楽しかった」

さらに掘り下げて「どういうところが楽しかったのか」を尋ねると、

「一つの目標に向かって皆が団結する一体感かな。美術部の子が旗をデザインしたり、ダンスを習っている子が振り付けしたり。それぞれが個性や得意なことを生かして一つのものを作り上げていく、その過程が楽しかった」

当のFさんはリーダー、ムードメーカーの役割を果たしていたといいます。

こうしたエピソードをいろいろと聞くうちに、Fさんは自分一人で行動して成果を上げるよりも、仲間たちと一丸となって目標を目指し、達成することにやりがいを感じていることがわかりました。

私からご提案したのは、ウエディングプロデュース会社です。結婚式を挙げるカップルのこだわりや夢をいかにしてかなえるか、結婚式や披露宴をいかに感動的に演出するかという目標に向け、多くのスタッフが力を合わせて働く職場。その統括部長のポジションをお勧めしました。

Fさんは「考えてもみなかった」と驚かれましたが、この業界ならではのチームワークのプロセスに魅力を感じたようです。「また、あの頃に似た感覚が味わえるのかな」という期待を胸に応募し、面接を重ねるうちに「自分の志向に合っている」と確信。転職を果たしました。

自分はどんな状況で「楽しい」と感じるのか。これまで、「楽しい」と感じた場面を思い出すまで、過去をさかのぼって思い起こしてみてください。そして、「なぜそれが楽しかったのか」「なぜあんなにも夢中になれたのか」を突き詰めて考えていくと、自分にとって本当に大切なもの、モチベーションの源泉が見えてきます。それを「軸」とした働き方ができる業種・会社に目を向けてみてはいかがでしょうか。

ポイント3 誰に対しどんな価値を提供したいのか

「自分が大切にしたいこと」から介護施設の施設長に。写真はイメージ=PIXTA

Yさん(40代女性)は、これまでエンターテインメント業界に身を置き、ショーのプロデュースやキャストのマネジメントを手がけてこられましたが、やむを得ない事情で転職活動を開始しました。

彼女は当初、同じエンターテインメント業界を中心に転職先を探していましたが、納得のいく求人になかなか出合えません。そこで、対象業界を広げようということになり、Yさんの仕事に対する思い、こだわりについて、さらに深くお話をお聞きしました。

その上で私が選択肢の一つとして提案したのが、「介護施設の施設長」の求人です。これまでの華やかな業界とのギャップに、Yさんは戸惑い、最初は抵抗感を示しました。しかし、その仕事がどんな役割や意義を持ち、日々どんな取り組みをするのかを詳しく知るうちに、「自分が大切にしたいこだわりにマッチしている」と気付き、応募を決意されたのです。

彼女が昔からこだわり続けてきたのは、「人々が感動し、楽しいと思えるものを創り出す」ということ。「入居者がいかに毎日楽しく笑顔で過ごせるかを追求し、エンターテインメントの空間を創り上げるのは面白そうだし、やりがいがある。私がこれまで取り組んできたことと同じ」だと、Yさんは考えたのです。

そして、ショーのキャストやスタッフをとりまとめてきたマネジメント経験は、施設で働く介護スタッフや看護師などのマネジメントにも生かせると評価され、採用に至りました。

自分の仕事で、誰に、どんなふうに役立てば、自分は喜びを感じられるのか。その軸が定まれば、意外な業種でもそれを実現できる可能性が見つかるものです。

――転職活動にあたって、経験を積んだビジネスパーソンほど、「経験をどう生かすか」を第一に考えがちです。しかし、ビジネス人生がどんどん長く伸びている今の時代、生き生きと働き続けるためにも、「どんな仕事、働き方なら自分はワクワクできるのか」という視点も、ぜひ大切にしていただければと思います。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。次回は2019年1月4日の予定です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
morich代表取締役 兼 All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「のぼりつめる男 課長どまりの男」(サンマーク出版)ほか、著書多数。

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧