大学生のうちに読んでおきたい進路選択に役立つ10冊
僕ら流・社会の変え方(24)
1月も後半になり、大学生は後期の期末テストのシーズンですね。テストが終わるとついに春休みです。春休みにはたくさんの時間があると思いますが、その一部を使って、本などを読みながら将来のことについてじっくり考えたいものです。僕もよく、学生から「どんな本を読んだらいいですか?」とか、「どんな本に影響を受けましたか?」などと聞かれます。そこで今回は、春休み中に読んでおきたい本を一気に10冊、3つのカテゴリーにわけてご紹介したいと思います。僕の場合、どちらかというとまちづくりとか社会貢献とかそういった本に寄ってしまいますが、その点はご容赦ください。
まずはみんなが読んでいる有名な本を押さえておきたいところです。これらの本は、多くの大人も読んでいますし(きっと、就活の際の面接官も!)、今の世の中で起きつつあることについて、大まかに理解するのに役立つと思います。
・『コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる』(山崎亮 著、2011年、学芸出版社)
僕の尊敬するまちづくりの大先輩、コミュニティデザイナー・山崎亮さんのご著書です。山崎さんが『コミュニティデザイン』に関わるようになったきっかけから、2011年のはじめ頃までの活動が時系列にまとめてあります。著者がこれからのまちのあり方をどう考えているのか、また何がきっかけでハードではなくソフトの視点からまちに関わるようになったのかがわかる1冊となっています。今、様々な地域で起きていることや社会が抱える課題がつかめます。
・『「社会を変える」を仕事にする』(駒崎弘樹 著、20011年、筑摩書房)
元ITベンチャー経営者であり、現在認定NPO法人フローレンス代表理事、そしてグリーンバードの理事もしてくれている尊敬する先輩・駒崎弘樹さんの1冊です。自身の経験をもとに今では国や地方自治体に対する政策提言なども積極的に行っている駒崎さんが、保育の社会問題に出会い、東京の一地域ではじめた病児保育サービスを全国に展開していくプロセスで起きた様々なことを書いています。社会起業家を目指している人はもちろんのこと、社会をよくするために、何からはじめていいかわからない方、NPOへの就職も含めて自分のキャリアを考えている方などにオススメです。
・『社会を変えるには』(小熊英二 著、2012年、講談社)
この本は、僕が最も影響を受けた本の1つです。社会を変えるには具体的に何が必要なのかについて、またそもそも社会とは何か、そこに関わるとはどういうことなのかについて歴史や哲学など様々な視点から説明している本です。今の世の中、何かおかしいけれど何をすれば良いかわからないといった思いを持つ人々にぜひ読んでもらいたいです。実は僕、この本がきっかけで、社会人になった今、再び慶應義塾大学の小熊先生の研究室の博士課程に在籍することになりました。
次は、人生の岐路にたった時に役立つ本です。自分が今何をしたら良いのか、どうすればいいのかわからなくなった時に読んでほしいです。
・『閉じこもるインターネット』(イーライ・パリサー 著、2012年、早川書房)
FacebookのタイムラインやGoogleの検索結果など、私たちが普段接している情報空間は、属性やインターネット上でとったアクションによって一人ひとりに最適化され、居心地が良いように設計されています。これはすなわち「自分と異なる価値観と出会わない」ということ。極端にノイズの少ない環境の中で今の社会のコミュニケーションは生まれていて、それをベースに同じ価値観でつながる「スモールコミュニティ」がつくられているとのことです。現在のコミュニケーションの状況が鋭く分析されていて、思わず自分の情報への接し方を見直したくなる本です。
・『独立国家のつくりかた』(坂口恭平 著、2012年、講談社)
建築家から作家、芸術家、音楽家に至るまで、活動が多岐にわたる著者。題名だけをみるとちょっとびっくりしてしまいますが、今ある社会システムを疑ってみて、視点を少し変えて世の中をみるだけで、僕たちには無限の可能性があるということに気づかせてくれる本になっています。今の延長線上ではなく、全く違った見方で世の中や自分のキャリアを見直してみる。そんな思考実験が、時には役立つと思います。
・『社会の変えるのはじめかた』(横尾俊成 著、2013年、産学社)
自著の紹介ですみません!僕がどのようにキャリアを選び、進んできたのか、ふつうの会社員だった僕がなぜNPOや社会起業、議員の道を選ぶにいたったのかを余すところなく書きました。また、これまでの僕の経験を元に、まちづくりの現場で起きている変化について感じたこと、気付いたことも記しました。最近、「社会のために何かしたい」と考える学生が増えましたが、実は、企業にいても、NPOにいても、政治をやっていても、「社会にいいこと」「世の中のためになること」はいくらでもできます。この本が何かをはじめるきっかけになると嬉しいです。
「先行き不透明」と言われる現代社会においては、10年先、20年先を予想して行動することは正直、難しいと思います。それでも、精一杯想像し、未来のために今から何を準備していくべきかを、幾通りか考えておくことはできます。最後は、そのためのヒントが詰まった本をご紹介します。
・『インターネットの次に来るもの』(ケヴィン・ケリー 著、2016年、NHK出版)
この本は、ITなどの技術革新とそれがもたらす社会の変化についてリアルに描いています。世界的に強い影響力を持つ雑誌の編集長を務めていた著者が未来へのガイドラインとして書いた1冊です。著者が考える、これからの世の中のサービスにとって不可避な動きを「フローイング」「シェアリング」「トラッキング」など、12の動詞から解説しています。AIの時代において、何かをはじめたり、発明したりするのに最良な時は今であるとはっきり明言していて、何だかわくわくする本です。
・『未来政府』(ギャビン・ニューサム 著、2016年、東洋経済新報社)
著者は元々サンフランシスコの市長でした。政治をサービス業と捉え、情報公開し、何より透明性を確保する政府を目指した自身の経験を踏まえながら、未来の政府はどうあるべきか、また生活者が持つ潜在的なニーズに対して政府はどのようにこたえていくべきかを具体的に示しています。最新のテクノロジーをいかに使うべきかについても書かれており、僕も政策づくりに大いに参考にしています。最近では民間のサービスがどんどん公共領域に進出し、政府との役割分担が不明確になってきていると言われています。そんな中、皆さんが民間企業に就職するにせよ、政府で働くにせよ、参考になる本なのではないでしょうか。
・『日本のシビックエコノミー』(江口晋太朗、太田佳織、岡部友彦、小西智都子、二橋彩乃 著、紫牟田伸子 著・編、フィルムアート社編集部 編、2016年、フィルムアート社)
この本には、僕が現場で本当に知りたかったことがたくさん載っています。まちで成功した事例について、その一つひとつのプロセスが丁寧に書かれているため、それをトレースすることでまちづくりの具体的な方法論が学べるのです。市民が主体となり、地域でつくり上げている小さな経済の事例が20個解説されているのですが、それぞれについてポイント、ソーシャルインパクト、類似事例が紹介されています。この本を読めば、新しい日本は、まちの小さな事例から生まれてくるんだと確信するでしょう。
・『18歳からの選択』(上木原弘修、横尾俊成、後藤寛勝 著、2016年、フィルムアート社)
最後にまた僕の本を紹介させてください! これは、昨年の18歳選挙権の解禁にあたり、尊敬する博報堂の先輩、そしてNPO法人僕らの一歩が日本を変える。の代表で僕の大好きな後輩と一緒に書いた本です。2030年という未来を見据えて、今から考えておくべきことを20のテーマで書いています。様々な世代の、様々な立場の筆者が集まって議論し、問題の背景、論点をコンパクトにまとめました。この本を読んで、「世の中にはいろんな価値観があるんだ。そして、今からなら何だってできるんだ。選択肢は無数にあるんだ。」ということに気づいてもらえたなら嬉しいです。18歳でなくとも、大人も子どもも読んでほしい1冊です。
どうでしたか? 今回ご紹介した10冊の本が、少しでもみなさんのキャリア選択に役立つなら嬉しいです。ぜひ、感想を教えてください!
NPO法人グリーンバード代表/NPO法人マチノコト代表/港区議会議員(無所属)/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士課程に在籍中。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回、第10回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を連載中。著書に『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)、『18歳からの選択 社会に出る前に考えておきたい20のこと』(フィルムアート社)。
HP:http://www.ecotoshi.jp
Twitter: @ecotoshi
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