人生の分岐点に立った時に「迷ったら全部やる」の法則
僕ら流・社会の変え方(12)
この連載では、これまで「僕ら流社会の変え方」と題して、学生の皆さんにも身近に感じてもらえるような「社会を変える」方法とその心構えについてお話ししてきました。かくいう僕ですが、実は昔から人前で話すのはとても苦手でしたし、ましてや学生の頃には、政治にかかわろうなんて思ってもいませんでした。今回は僕の学生時代を振り返りながら、僕自身が日々心がけていることをお伝えしたいと思います。
無力。でも、「社会を変える」に目覚めた時
僕は大学時代、髪を金色に染めて飲み会や合コン、クラブとアルバイトに明け暮れる......、そんな普通の(?)学生でした。そして、どこか満たされない毎日から抜け出すため、アメリカ留学へ。帰国しても似たような生活をしていた僕を変えたのは「9.11」、アメリカ同時多発テロ事件でした。
留学時代にお世話になった方がこの事故で亡くなったことを知り、「自分には何ができるだろう」とひたすら考える毎日が始まりました。遠く離れた国で起きたことでも、僕にとっては身近な、大きな問題。それでも、なす術なく見ているだけしかできず、悔しさと無力感でいっぱいでした。
小さく動いたことでついた自信
悩み続ける毎日でしたが、「とにかく動いてみよう」と色々なイベントやシンポジウムに顔を出すことを始め、そこで出会った友人と「世界学生会議」というイベントを開催しました。世界中から若者を集めてこれからの世界や「平和」についてディスカッションをするという合宿の企画でした。
気軽に始め、友人・知人に声をかけて少しずつ運営メンバーを募っていったイベントでしたが、自分たちが思った以上に共感の輪が広がり、結果的になんと2日間で1000人もの学生が集まり、メディアにも多く取り上げられました。この小さな成功は、参加者にも自分にも大きな変化をもたらしました。僕は、「テロや戦争という大きな問題にも、自分たちの小さな行動の積み重ねで立ち向かえるかもしれない」という思いを抱きました。
そこから様々なNGO・NPOでボランティアやインターンの経験をさせていただいた後は、広告会社の博報堂に入り、NPOの代表と港区の区議会議員になりました。この間のストーリーは、以前この連載でお話しした通りです。
「何だかできた話だなあ」と思われるかもしれません。でも、昔の僕は本当に言い訳がましくて、「何もしない」人間だったんです。「お金がないからデートができない」とか「バイトが忙しいから留学できない」とか、そんな理由を一生懸命考える毎日。それが、小さく動いてみたことが成功につながったことから、「やる理由」を見つけて楽しむやり方を学びました。それから先は「迷ったら全部やる!」を徹底し、その時々に出会うチャンスに飛びつきつつ、後悔しない生き方を目指してきました。
計画通りに生きるより、その瞬間を楽しむ
よく「横尾くんは順調に政治家への道を歩んできたんだね」とか「予定通りに進んできたんだね」とか言われることがあります。でも、僕は計画通りに生きることがとても苦手です。
今これを読んでいる学生さんも、周りから「10年後の理想の自分を考えて、計画を立てて生きなさい」と言われたことがきっとあると思います。僕もよく言われます。でも、そんな時、僕はつい「もったいなあ」と考えてしまいます。人生ではいつ、どこで、どんな形で、自分が変わるきっかけが舞い降りてくるかわからないからです。
色々と経験して「今が一番楽しい」と思える僕には、計画通りにぴったり生きるよりも、(なんとなくの方向性は持ちつつも)いつでも可能性に気づいては横道に逸れる「遊び」の部分を持っていた方がいいと、はっきりと言えます。僕自身もこれから先、政治家をやっているかわからないし、NPOを続けているかもわからない。「これを自分がやらなきゃいけない!」と心から思えることが見つかったら、迷わずそっちに舵を切ります。
「行き当たりばったり」が見せてくれる景色
もちろん、日々悩みはたくさんあるし、考え込むことも多いです。でも、悩んだ時も、迷った時も、「大切な仲間が助けてくれる」事実が僕を強くしてくれています。計画された人生を生きるよりも、行き当たりばったりで、その瞬間を楽しむこと。そこでたくさんの仲間と出会って、多くの「幅」を持つこと。その「幅」が、また「これから何があっても生きていける」という自信につながっているんだと思います。
これから皆さんには、日常の悩みもさることながら、就活や受験など、たくさんの大きな分岐点が訪れると思います。もし、迷うことがあれば、ぜひ参考にしてみてください。「迷ったら全部やる!」の法則を。
NPO法人グリーンバード代表/NPO法人マチノコト代表/港区議会議員(無所属)/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士課程に在籍中。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回、第10回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を連載中。著書に『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)、『18歳からの選択 社会に出る前に考えておきたい20のこと』(フィルムアート社)。
HP:http://www.ecotoshi.jp
Twitter: @ecotoshi
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