会社を辞めてNPOの代表に、そして政治の世界へ僕ら流・社会の変え方(2)

横尾俊成 NPO法人グリーンバード代表/港区議会議員(無所属)

横尾俊成 NPO法人グリーンバード代表/港区議会議員(無所属)
2014/12/15

前回、ゴミ拾いは「かっこいい」、そして、小さなことだけれど社会を変えうる活動だという考え方を紹介しました。

会社を辞め、NPOの代表へ

グリーンバードの活動を通じて地域に深く関わっていくにつれ、僕は「まちには自分たちの居場所がたくさんある」ことに気付きました。広告会社の博報堂で身につけたプロモーションという武器はまちづくりの分野に活かせるという確信を持ち、順風満帆だった会社員生活を辞めてNPOの代表になることを決意しました。

正直、会社を辞めることについては、すごく悩みました。自分がやりたいことは80%くらい出来ていたし、同僚も面白くて刺激的な人たちばかりでした。傲慢かもしれないけどそれなりの結果も出していたし、相談した上司も多くは「残った方がいい」とアドバイスしてくれました。

でも、「自分の人生の100%を"今取り組むべきもの"に費やした方がいい」「せっかく武器を手に入れたんだから、それを最も有効な方法で使いたい」「自分の気持ちに嘘をついてはいけない」という思いが抑えられなくなり、後ろ髪を引かれつつ、博報堂を辞めました。

グリーンバードの代表として、7年後までに国内外に100チームつくること。そして全国に、古くから住むまちの人たちと新住民や若者の思いをつなげて形にする「まちのプロデューサー」を100人つくることを決心しました。

政治をはじめました。

それまで政治に全くと言っていいほど関心を払っていなかった私が政治を強く意識し始めたのは、グリーンバードでの活動に加え、博報堂時代の業務で政治に関わったことがきっかけでした。政治を勉強し、歴史を学びました。

そして政治の構造を知れば知るほど、為政者や行政の動機が「変えない」ことに働きやすい環境にあること、またこれから僕たちに降り掛かる様々な社会課題を意識させられ、僕たち若者が動かないと日本は大変なことになってしまうことに気づきました。

少子高齢社会の日本が立ち行かなくなってきていることは誰もが気づいているのに、みんなで黙って見ている状態、また政権交代を果たした政治がどんどんまた元に戻っていく状態、そしてそれに対して市民が何も抵抗できない状態が続くのは嫌だ。ならば、自分が政治家になって、内側から構造を変えていけばいい――。次第にそんな風に考えるようになりました。

政治家にはあるべき社会の姿を描き、提示すること、そして、それを実行することが求められています。一方、予算も人も限られる中で、これからの社会は、行政も民間も関係なく、より多くの人たちが役割を分担して共につくっていくことが必要です。

そのためには、政治家は彼らの知恵を引き出して、前述した「社会のために何かしたい」という人々の気持ちをアクションに変えるサポートをしていくことが大切です。町会、自治会、消防団などの地域の人たちは、多くの経験や地域での力を持っているものの、人手不足に悩んでいます。一方の若者は多くのアイディアを持っていて、やりがいや手ごたえを求めています。

批判ではなく、アイディアでまちを盛り上げること。そしてアイディアに乗ってくれた方々とともに自分たちの力を最大限に発揮して、世界に伍せるまちをつくっていくこと。自分も一人の「まちのプロデューサー」になるべく選挙に立候補し、マニフェスト「港区を良くする20のアイディア」を掲げて多くの方々と議論を重ねました。twitterやfacebookなどSNSで出会ったたくさんのスゴい若者、学生、仲間に協力してもらい、地盤・看板・鞄も何もないところから、お陰さまで当選を果たすことができました。

政治家になってからも様々な不条理に出会い、戸惑うことが多々ありましたが、皆さんからのアイディアを日々いただき、お陰さまで多くのことを実現することができました。今は、政治や行政をオープンにした上で、これまで意見を発していなかった人も含めた多くの人たちが、まちのために積極的にアイディアや知恵を出す仕組みを次々とまちに生み出すべく、日々活動しています。

自分はまちや社会のために、何ができるのか

今、日本は閉塞感の中にあると言われています。私たちの未来には、解決するべき課題が山のように転がっています。そんな中、「政治はちっとも変わらない」「メディアはちっとも教えてくれない」と誰かの、何かのせいにして思考を停止してしまったら、今ある構造に絡めとられ、みんなで不幸になっていくだけです。

例えば、若者の投票率が低いという問題に対して、「どうせ行っても何も変わらない」「若者の意見に同等の重みを持たせるには(20代~30代の90%が投票しなければだめだから)諦める」としてしまったら、今より悪い方向にはいっても、いい方向には決していきません。ならば、選挙以外で政治に圧力をかける方法を学べばいいし、90%の投票率を目指す運動を起こせばいいし、あるいは自分が政治家になればいいのです。

ゴミの問題もそうです。地球の環境問題を一気に解決することなんてできないけれど、身近なまちでゴミを拾うことはできます。そして、その活動に家族や友人を誘うことならできます。それを繰り返せば、きっとゴミのないきれいなまちができあがるでしょう。

だから、皆さんには、ぜひこれから「自分がこのまちで何ができるのか」という視点を、頭の片隅において欲しいと思います。何かの課題にぶち当たった時は、一方で自分のため、またもう一方で社会のためにとにかく小さく動いてみること。どんなことでもいい。身近なことからはじめてみることです。

既存の仕組みが様々な場面で機能不全を起こしている現状にあっては、先人の知恵を学びつつも思い切って変える方向で動くことが、時には大切です。そのためには、「社会を変える」方法を学ぶ必要がある。

この連載では、様々な立場から社会のために動いている先駆者たちに学びつつ、その手段を明らかにして、皆さんにどんどん武器を渡していければと考えています。

横尾俊成(よこお・としなり)
NPO法人グリーンバード代表/NPO法人マチノコト代表/港区議会議員(無所属)/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士課程に在籍中。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回、第10回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を連載中。著書に『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)、『18歳からの選択 社会に出る前に考えておきたい20のこと』(フィルムアート社)。
HP:http://www.ecotoshi.jp
Twitter: @ecotoshi
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